障害児相談支援

難病や障害と向き合うお子さんの子育ては、喜びも大きい一方で、情報収集や手続きの複雑さに戸惑うことも少なくありません。特に、まだ小さなお子さんの場合、周りに相談しにくいと感じる、必要な支援にたどり着くまでに時間がかかってしまうこともあるかもしれません。この記事では、そんなお子さんとご家族をサポートするための大切な制度「障害児相談支援」について、0歳から5歳のお子さんに特化して、わかりやすく丁寧にご説明します。


1. 制度の概要

「障害児相談支援」とは、難病や障害のあるお子さんやそのご家族が、安心して地域で生活できるよう、様々な福祉サービスを利用するための「相談窓口」であり、「計画作りのお手伝い」をしてくれるサービスのことです。

例えるなら、お子さんの発達に関する悩みを抱えた時に、どんな道を選べば良いか、どんなお店(支援サービス)があるか、親身になって一緒に考えてくれる「子育ての専門ナビゲーター」のような存在です。

この支援の最大のポイントは、「相談支援専門員」という専門家が、ご家族一人ひとりの状況やお子さんの発達段階に合わせて、ピッタリな支援サービスを一緒に探し、そのサービスをスムーズに利用できるようにお手伝いしてくれる点です。

たとえば、

  • 「うちの子は言葉が遅いから、言語の訓練を受けさせたいけど、どんな施設があるの?」
  • 「集団生活に慣れてほしいけど、どこから始めたらいいか分からない…」

このような悩みに、「それならAという児童発達支援センターやBという療育園が考えられますよ。それぞれの施設の特徴を説明しますね」というように、具体的な選択肢を提示し、納得いくまで一緒に考えてくれます。


1-2. 障害児相談支援の役割と目的

障害児相談支援の主な役割は、以下の2つです。

  1. 情報の提供と相談対応:お子さんの発達に関する悩みや、利用できる福祉サービスについての情報を提供し、ご家族からの相談に耳を傾けます。
  2. サービス等利用計画の作成:「サービス等利用計画」という、お子さんのためのオーダーメイドの支援計画を作成します。この計画は、お子さんの発達の状況やご家族の希望に合わせて、どのサービスをどのくらいの頻度で利用するかなどを具体的にまとめたものです。

この制度の目的は、お子さんが地域で安心して生活し、その子らしく成長していけるよう、途切れることのない支援を提供することです。そして、ご家族が子育ての負担を軽減し、社会的に孤立しないよう支えることも大切な目的です。

ご家族だけでは見つけにくい支援や、利用手続きが複雑だと感じる時に、この制度が大きな助けとなります。


1-3. 6歳以上のお子さんとの違い(継続的な支援の重要性)

障害児相談支援は、0歳から18歳までの障害のあるお子さん全てが対象となる制度です。未就学児(0~5歳)と学齢期(6歳以上)のお子さんで、支援の基本的な流れは同じですが、提供されるサービスの内容や、相談の視点が変わってきます。

  • 0~5歳の未就学児の場合:「児童発達支援」や「医療型児童発達支援」といったサービスへの橋渡しが主な役割です。基本的な生活習慣の習得や、言葉・運動機能の発達支援、そして集団生活への適応を促すことに重点を置いた計画を立てていきます。例えば、「幼稚園や保育園に入る前に、集団生活に慣れるための準備をしたい」といった相談に対し、適切な児童発達支援施設を探し、利用計画を立てるお手伝いをします。
  • 6歳以上の学齢期のお子さんの場合:「放課後等デイサービス」や「就労継続支援」など、学校生活や将来の社会参加を見据えた支援サービスへの移行や、成人後の生活を見据えた計画作りが加わります。

障害児相談支援は、お子さんの成長段階に合わせて、切れ目のない支援を提供するための「要(かなめ)」となるサービスです。小学校入学後も、同じ相談支援専門員が継続して支援してくれることも多く、お子さんの成長を長期的に見守ってくれる頼れる存在です。


2. 利用対象者

2-1. どのようなお子さんとご家族が利用できるの?

障害児相談支援は、0歳から18歳までの難病や障害のあるお子さんが利用対象です。特に、0歳から5歳までの未就学のお子さんで、以下のような状況のご家族が利用を検討できます。

  • 身体に障害があるお子さん:生まれつき手足の動きが少し不自由なお子さん、医療的ケアが必要なお子さんなど。
  • 知的障害があるお子さん:言葉や理解の発達がゆっくりで、サポートが必要なお子さんなど。
  • 精神に障害があるお子さん:人とのコミュニケーションが少し苦手だったり、特定の行動を繰り返す傾向があったりするお子さん。発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)もこれに含まれます。
  • 難病があるお子さん:国の指定難病に該当する病気で、日常生活を送る上で継続的な支援やサポートが必要なお子さんなど。

「うちの子は、どの条件に当てはまるんだろう?」と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。大切なのは、お子さんの発達に「心配がある」と感じた時に、専門家に相談することです。


2-2. 診断がなくても利用できる?

はい、正式な診断がなくても、障害児相談支援を利用できる可能性は十分にあります。

「まだ医師の診断は出ていないけれど、子どもの発達に不安がある」「発達が遅いと言われたけど、どうしたらいいか分からない」といった場合でも、まずは相談支援事業所に連絡してみましょう。

相談支援専門員は、診断の有無にかかわらず、お子さんの発達の様子やご家族が困っていることについて丁寧に話を聞いてくれます。そして、お子さんの状況をアセスメント(詳しく調べること)し、支援が必要かどうかを判断してくれます。

例えば、「1歳半健診で言葉が遅いと言われたけど、まだどこにも相談していない」という場合、相談支援専門員がご家族の状況をヒアリングし、必要に応じて専門機関(発達相談センターや小児科医など)への紹介や、児童発達支援の利用に向けたサポートをしてくれます。

診断の有無よりも、**お子さんの発達に支援が必要であるという「福祉的な視点」**が重視されますので、一人で抱え込まずに相談してみてください。


3. 注意事項

3-1. 利用料金について

障害児相談支援の利用料金は、原則として無料です。これは、相談支援が福祉サービス利用の入り口であり、誰もが気軽に相談できるよう、国が費用を負担しているためです。

ただし、相談支援事業所までの交通費や、相談支援専門員がご自宅を訪問する際の交通費など、実費が発生する場合があります。事前に確認しておくことをおすすめします。


3-2. 相談支援事業所の選び方

障害児相談支援を提供する事業所は、地域によってたくさんあります。どの事業所を選ぶかは、ご家族にとって大切なポイントです。

  • 自宅からの距離やアクセス:通いやすい場所にあるか、訪問してもらいやすいか。
  • 事業所の雰囲気やスタッフの対応:実際に足を運んでみて、信頼できそうか、話しやすいか。
  • 得意な分野や専門性:例えば、医療的ケアが必要なお子さんの支援に詳しいか、特定の障害に専門性があるかなど。
  • 利用者の評判:もし可能であれば、実際に利用している方から話を聞いてみるのも良いでしょう。

複数の事業所の情報を取り寄せたり、直接問い合わせてみたりして、ご家族とお子さんに合った相談支援事業所を見つけましょう。市区町村の窓口で、地域の事業所リストをもらうこともできます。


3-3. 相談支援専門員との連携の重要性

相談支援専門員は、お子さんとご家族にとって、福祉サービスを利用する上での「伴走者」のような存在です。率直に悩みを伝え、お子さんの状況を共有することで、より的確な支援を受けることができます。

  • お子さんの成長や変化があった時は、積極的に報告しましょう。
  • 利用しているサービスについて困っていることがあれば、相談しましょう。
  • 定期的に面談を行い、サービス等利用計画の見直しや、今後の方向性について話し合いましょう。

相談支援専門員と良好な関係を築くことが、お子さんの成長を支える上で非常に重要です。


4. 申請窓口

4-1. どこに相談すればいいの?

障害児相談支援の利用を検討する際に、最初に相談する窓口は、お住まいの市区町村の障害福祉担当部署です。

具体的には、以下のような部署が相談窓口となります。

  • 市役所・区役所の障害福祉課、子育て支援課、保健センター
  • 児童相談所
  • 地域子育て支援センター
  • 基幹相談支援センター(地域によっては、より専門的な相談支援を行っている場合もあります)

「子どもの発達のことで相談したい」「障害児相談支援について知りたい」と伝えてみましょう。専門の相談員が、ご家族のお話を聞き、今後の流れについて丁寧に教えてくれます。


5. 申請方法

5-1. 申請に必要な書類

障害児相談支援を申請する際には、特別に準備する書類は多くありません。多くの場合、市区町村の窓口での相談時に「障害児相談支援を利用したい」と伝えることで、手続きが始まります。

しかし、以下の情報が分かると、相談がスムーズに進みます。

  • お子さんの情報:氏名、生年月日、現在の発達状況や気になること
  • ご家族の情報:氏名、連絡先
  • 医師の診断書や健診結果(もしあれば):お子さんの状況をより詳しく伝えるための参考資料です。

基本的には、相談支援専門員がご家族の状況を聞き取り、必要な情報を集めてくれますので、心配しすぎる必要はありません。


5-2. 申請時のポイント

申請をスムーズに進めるためには、いくつかのポイントがあります。

  • 早めに相談する:お子さんの発達に少しでも気になることがあれば、できるだけ早く相談しましょう。早期の支援がお子さんの発達にとって非常に重要です。
  • 困り事を具体的に伝える:「〇〇ができない」「〇〇で困っている」など、具体的なエピソードを話すことで、相談支援専門員がお子さんの状況をより深く理解し、適切な支援を提案しやすくなります。
  • 希望を明確に伝える:「こんなことができるようになりたい」「将来はこうなってほしい」など、ご家族の希望を伝えることで、計画に反映されやすくなります。
  • 疑問点は質問する:手続きや制度についてわからないことがあれば、遠慮せずに担当者に質問しましょう。納得できるまで説明を求め、不安を解消することが大切です。


5-3. 申請後の流れと注意点

申請後、相談支援専門員がお子さんとご家族との面談を通して、サービス等利用計画を作成します。この計画案は、市区町村に提出され、市区町村が内容を審査し、問題なければ支給決定(サービス利用の承認)が行われます。

支給決定がされると、お子さんのために「通所受給者証」(障害児通所支援などのサービスを利用するための証明書)が発行されます。これにより、計画に沿って児童発達支援などのサービスを利用できるようになります。

注意点として、サービス等利用計画は一度作ったら終わりではありません。お子さんの成長や発達の段階に合わせて、定期的に見直しが必要になります。相談支援専門員は、計画の実施状況を確認する「モニタリング」を定期的に行い、必要に応じて計画の変更を提案してくれます。

お子さんの成長に合わせた、きめ細やかな支援を継続していくために、相談支援専門員との連携を密にすることが大切です。


最後に:一人で悩まないで、まずはお話を聞かせてください

難病や障害を持つお子さんを育てる中で、「これでいいのかな」「どうすればいいんだろう」と不安になることは、決して珍しいことではありません。

しかし、どうか一人で抱え込まないでください。

「障害児相談支援」は、お子さんの成長を温かく見守り、ご家族の皆さんの「困った」に寄り添い、必要な支援へとつなぐための大切な社会の仕組みです。この制度を活用することで、お子さんの可能性を広げ、ご家族の皆さんが安心して子育てに取り組めるようになります。

まずはお住まいの市区町村の窓口に連絡し、「子どもの発達のことで相談したい」「障害児相談支援について知りたい」と伝えてみてください。一歩踏み出すことで、きっと新しい道が開けるはずです。

私たち「かんしん広場」は、お子さんとご家族の皆さんが安心して、笑顔で毎日を過ごせるよう、これからも役立つ情報をお届けしてまいります。

お子さんのキラキラした未来のために、今、私たちと一緒に最初の一歩を踏み出しませんか?


参考情報・出典

● 厚生労働省:

● 子ども家庭庁:

● 各自治体の障害福祉担当部署のホームページ: お住まいの市区町村のホームページで、「障害児相談支援」「相談支援事業所」などのキーワードで検索してみてください。 (例:東京都世田谷区 障害児相談支援事業所一覧、大阪市 障害児相談支援のご案内 など)

● 国立成育医療研究センター:
● 難病情報センター: