難病や障害と向き合うお子さんの子育ては、喜びも大きい一方で、情報収集や手続きの複雑さに戸惑うことも少なくありません。特に、まだ小さなお子さんの場合、周りに相談しにくいと感じる、必要な支援にたどり着くまでに時間がかかってしまうこともあるかもしれません。この記事では、そんなお子さんとご家族をサポートするための大切な制度「障害児相談支援」について、0歳から5歳のお子さんに特化して、わかりやすく丁寧にご説明します。
「障害児相談支援」とは、難病や障害のあるお子さんやそのご家族が、安心して地域で生活できるよう、様々な福祉サービスを利用するための「相談窓口」であり、「計画作りのお手伝い」をしてくれるサービスのことです。
例えるなら、お子さんの発達に関する悩みを抱えた時に、どんな道を選べば良いか、どんなお店(支援サービス)があるか、親身になって一緒に考えてくれる「子育ての専門ナビゲーター」のような存在です。
この支援の最大のポイントは、「相談支援専門員」という専門家が、ご家族一人ひとりの状況やお子さんの発達段階に合わせて、ピッタリな支援サービスを一緒に探し、そのサービスをスムーズに利用できるようにお手伝いしてくれる点です。
たとえば、
このような悩みに、「それならAという児童発達支援センターやBという療育園が考えられますよ。それぞれの施設の特徴を説明しますね」というように、具体的な選択肢を提示し、納得いくまで一緒に考えてくれます。
障害児相談支援の主な役割は、以下の2つです。
この制度の目的は、お子さんが地域で安心して生活し、その子らしく成長していけるよう、途切れることのない支援を提供することです。そして、ご家族が子育ての負担を軽減し、社会的に孤立しないよう支えることも大切な目的です。
ご家族だけでは見つけにくい支援や、利用手続きが複雑だと感じる時に、この制度が大きな助けとなります。
障害児相談支援は、0歳から18歳までの障害のあるお子さん全てが対象となる制度です。未就学児(0~5歳)と学齢期(6歳以上)のお子さんで、支援の基本的な流れは同じですが、提供されるサービスの内容や、相談の視点が変わってきます。
障害児相談支援は、お子さんの成長段階に合わせて、切れ目のない支援を提供するための「要(かなめ)」となるサービスです。小学校入学後も、同じ相談支援専門員が継続して支援してくれることも多く、お子さんの成長を長期的に見守ってくれる頼れる存在です。
障害児相談支援は、0歳から18歳までの難病や障害のあるお子さんが利用対象です。特に、0歳から5歳までの未就学のお子さんで、以下のような状況のご家族が利用を検討できます。
「うちの子は、どの条件に当てはまるんだろう?」と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。大切なのは、お子さんの発達に「心配がある」と感じた時に、専門家に相談することです。
はい、正式な診断がなくても、障害児相談支援を利用できる可能性は十分にあります。
「まだ医師の診断は出ていないけれど、子どもの発達に不安がある」「発達が遅いと言われたけど、どうしたらいいか分からない」といった場合でも、まずは相談支援事業所に連絡してみましょう。
相談支援専門員は、診断の有無にかかわらず、お子さんの発達の様子やご家族が困っていることについて丁寧に話を聞いてくれます。そして、お子さんの状況をアセスメント(詳しく調べること)し、支援が必要かどうかを判断してくれます。
例えば、「1歳半健診で言葉が遅いと言われたけど、まだどこにも相談していない」という場合、相談支援専門員がご家族の状況をヒアリングし、必要に応じて専門機関(発達相談センターや小児科医など)への紹介や、児童発達支援の利用に向けたサポートをしてくれます。
診断の有無よりも、**お子さんの発達に支援が必要であるという「福祉的な視点」**が重視されますので、一人で抱え込まずに相談してみてください。
障害児相談支援の利用料金は、原則として無料です。これは、相談支援が福祉サービス利用の入り口であり、誰もが気軽に相談できるよう、国が費用を負担しているためです。
ただし、相談支援事業所までの交通費や、相談支援専門員がご自宅を訪問する際の交通費など、実費が発生する場合があります。事前に確認しておくことをおすすめします。
障害児相談支援を提供する事業所は、地域によってたくさんあります。どの事業所を選ぶかは、ご家族にとって大切なポイントです。
複数の事業所の情報を取り寄せたり、直接問い合わせてみたりして、ご家族とお子さんに合った相談支援事業所を見つけましょう。市区町村の窓口で、地域の事業所リストをもらうこともできます。
相談支援専門員は、お子さんとご家族にとって、福祉サービスを利用する上での「伴走者」のような存在です。率直に悩みを伝え、お子さんの状況を共有することで、より的確な支援を受けることができます。
相談支援専門員と良好な関係を築くことが、お子さんの成長を支える上で非常に重要です。
障害児相談支援の利用を検討する際に、最初に相談する窓口は、お住まいの市区町村の障害福祉担当部署です。
具体的には、以下のような部署が相談窓口となります。
「子どもの発達のことで相談したい」「障害児相談支援について知りたい」と伝えてみましょう。専門の相談員が、ご家族のお話を聞き、今後の流れについて丁寧に教えてくれます。
障害児相談支援を申請する際には、特別に準備する書類は多くありません。多くの場合、市区町村の窓口での相談時に「障害児相談支援を利用したい」と伝えることで、手続きが始まります。
しかし、以下の情報が分かると、相談がスムーズに進みます。
基本的には、相談支援専門員がご家族の状況を聞き取り、必要な情報を集めてくれますので、心配しすぎる必要はありません。
申請をスムーズに進めるためには、いくつかのポイントがあります。
申請後、相談支援専門員がお子さんとご家族との面談を通して、サービス等利用計画を作成します。この計画案は、市区町村に提出され、市区町村が内容を審査し、問題なければ支給決定(サービス利用の承認)が行われます。
支給決定がされると、お子さんのために「通所受給者証」(障害児通所支援などのサービスを利用するための証明書)が発行されます。これにより、計画に沿って児童発達支援などのサービスを利用できるようになります。
注意点として、サービス等利用計画は一度作ったら終わりではありません。お子さんの成長や発達の段階に合わせて、定期的に見直しが必要になります。相談支援専門員は、計画の実施状況を確認する「モニタリング」を定期的に行い、必要に応じて計画の変更を提案してくれます。
お子さんの成長に合わせた、きめ細やかな支援を継続していくために、相談支援専門員との連携を密にすることが大切です。
難病や障害を持つお子さんを育てる中で、「これでいいのかな」「どうすればいいんだろう」と不安になることは、決して珍しいことではありません。
しかし、どうか一人で抱え込まないでください。
「障害児相談支援」は、お子さんの成長を温かく見守り、ご家族の皆さんの「困った」に寄り添い、必要な支援へとつなぐための大切な社会の仕組みです。この制度を活用することで、お子さんの可能性を広げ、ご家族の皆さんが安心して子育てに取り組めるようになります。
まずはお住まいの市区町村の窓口に連絡し、「子どもの発達のことで相談したい」「障害児相談支援について知りたい」と伝えてみてください。一歩踏み出すことで、きっと新しい道が開けるはずです。
私たち「かんしん広場」は、お子さんとご家族の皆さんが安心して、笑顔で毎日を過ごせるよう、これからも役立つ情報をお届けしてまいります。
お子さんのキラキラした未来のために、今、私たちと一緒に最初の一歩を踏み出しませんか?
● 厚生労働省:
● 各自治体の障害福祉担当部署のホームページ: お住まいの市区町村のホームページで、「障害児相談支援」「相談支援事業所」などのキーワードで検索してみてください。 (例:東京都世田谷区 障害児相談支援事業所一覧、大阪市 障害児相談支援のご案内 など)
● 国立成育医療研究センター: