保育所等訪問支援

難病や障害を持つ0〜5歳のお子さまの保育園・幼稚園生活を支える「保育所等訪問支援」。制度の概要、対象者、申請方法などをわかりやすく解説します。


保育所等訪問支援とは

「保育所等訪問支援」は、障害や難病を持つお子さまが保育園や幼稚園などの集団生活に適応できるよう、専門の支援員が施設を訪問し、直接的または間接的な支援を行う制度です。

支援員は、保育士や児童指導員、作業療法士、言語聴覚士、心理士などの専門職で構成され、お子さまの発達や行動に関する専門的な支援を提供します。


制度の目的

● 周囲と一緒に遊べない

● 言葉がうまく話せず意思が伝わらない

● 特定の音や環境に強い不安を感じる

このような困難を抱えるお子さまが、安心して集団の中で過ごせるように、専門的な支援を行うのが「保育所等訪問支援」の目的です。

特に乳幼児期(0〜5歳)は脳や心の発達が急速な時期であり、早期支援が将来の自立や社会参加につながる重要な鍵となります。


支援内容

0~5歳では、以下のような支援が提供されます。

1. 子どもへの直接支援

支援員が保育所や幼稚園に出向き、お子さまに直接かかわります。

例:

  • 集団遊びに入れない子どもに、遊び方を教えたり間に入って関係づくりを支援
  • 言葉でのやりとりが難しい子どもに、カードやジェスチャーなど代替手段を使ってサポート
  • 食事や着替えなどの場面で、スモールステップでの自立を促す支援

支援員は、児童発達支援の専門家(言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士など)であり、発達の段階に合わせて個別対応してくれます。


2. 保育士・施設スタッフへの支援

支援はお子さま本人だけでなく、保育士や幼稚園の先生たちへの「間接的な支援」も含まれます。

例:

  • 「この子は急な音に敏感なので、音楽を流すときは少し音量を下げると安心できますよ」
  • 「この子は視覚情報が得意なので、行動スケジュールをイラストで見せてみましょう」

このような具体的なアドバイスや対応方法の共有を行うことで、保育環境そのものを子どもにとってやさしい空間に変えていく支援です。


3. 保護者への支援・相談

支援員は保護者とも連携し、悩みや不安を共有しながら進めます。

例:

  • 「家では言葉が少ないですが、園ではこんな姿が見られましたよ」
  • 「今後の支援の方向性について一緒に考えていきましょう」

早期支援を通じて、保護者の心の負担を軽くし、安心して子育てができる環境づくりも目的のひとつです。


保育所等訪問支援を利用できる人

0歳~5歳未満の児童(乳幼児)で以下のいずれかに当てはまる方

  • 保育所、幼稚園、認定こども園、乳児院などに通っている
  • 発達障害や身体障害、知的障害、難病などの診断を受けている
  • 集団生活において特別な支援が必要とされる
  • 自治体が発行する「通所受給者証」保持者

※集団での生活や適応に専門的支援が必要であれば、診断や障害者手帳の有無に関係なく対象となります。


具体的な活用事例

  • 2歳の男の子|自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けたケース

2歳の男の子は保育園に入園したばかりで集団生活になじめず、一人遊びが中心で、他の子と目を合わせることも少なく、先生の呼びかけにも反応しにくい状態でした。保護者が「何かサポートできる制度はないか」と自治体に相談したことで、保育所等訪問支援の利用が決まりました。

支援内容としては、専門の支援員(臨床心理士)が月2回、保育園を訪問し、男の子の興味に合わせた遊び(積み木、パズル)を通じて、他児との関わりを自然に促進しました。


  • 4歳の女の子|医療的ケア児(てんかん)のケース

4歳の女の子は先天性のてんかんを患っており、日中に発作が起きる可能性があります。集団保育に参加させたいという保護者の強い希望がありましたが、保育園側は不安を感じていました。

支援内容としては、医療的ケア児に対応できる支援員(看護師資格あり)が、園の環境を評価。発作時の対応マニュアルを作成し、保育士に対してシミュレーション研修を実施し、作の兆候を見逃さない観察ポイントや連絡体制を整備しました。


6歳以上のお子様と異なる支援内容とは?

6歳以上のお子さまには「放課後等デイサービス」などの支援がありますが、保育所等訪問支援は、乳幼児期の集団生活への適応を支援することに特化しています。


保育所等訪問支援の注意事項

支援制度の利用について、注意しておきたい点を解説します。

  • 事前の相談:利用を検討する際は、まず市区町村の福祉担当窓口や児童発達支援センターなどに相談しましょう。
  • 支援計画の作成:支援を受けるには、「障害児支援利用計画」の作成が必要です。
  • 施設との連携:支援を受ける施設(保育所等)との連携が重要です。施設側の理解と協力が必要となります。
  • 費用負担:通所受給者証を利用して保育所等訪問支援や児童発達支援などの福祉サービスを受ける場合、かかった費用のうち9割が自治体、1割が利用者の負担です。


制度利用の問い合わせ先

基本は「お住まいの市区町村の福祉窓口」

保育所等訪問支援の利用を希望する場合は、まずはお住まいの市区町村(市役所・区役所・町役場)の福祉担当課(障害福祉課・子ども家庭課など)に相談してください。

よくある窓口の名称(地域により異なります)

  • 障害福祉課
  • 子ども福祉課
  • 子育て支援課
  • 発達支援センター
  • 保健センター


「保育所等訪問支援について相談したい」と伝えれば、適切な窓口につないでもらえます。


保育所等訪問支援の申請方法

1. 窓口に相談

保護者が市区町村の福祉窓口に相談します。

「子どもが保育園でうまく過ごせない」「障害があり、集団生活に不安がある」と伝えるとスムーズです。

2. サービス等利用計画の作成

「相談支援専門員」または「指定相談支援事業所」で、子どもの状況に応じたサービス等利用計画を作成します。

※作成支援を無料で受けられる場合もあります。窓口で確認しましょう。

3. 医師の意見書(必要な場合のみ)

医師の診断書や意見書の提出を求められることがあります(障害者手帳は不要です)。

4. 自治体による支給決定

必要性が認められると、「通所受給者証」が交付されます。

5. 事業所選定と利用開始

保護者が希望する保育所等訪問支援の事業所と契約し、支援を開始します。

お住まいの地域によって異なりますが、申請から利用開始まで1〜2か月程度かかる場合があります。


まとめ

「保育所等訪問支援」は、0〜5歳という大切な時期に、子どもが「できた!」という小さな成功体験を積み重ねられるように設計された制度です。

将来の学校生活や社会参加に向けた「最初の一歩」を、専門家と一緒に安心して踏み出せるようサポートする。それが、この制度の大きな目的です。


【参考】