保育所等訪問支援

難病や障害を持つ13〜18歳のお子さまの保育園・幼稚園生活を支える「保育所等訪問支援」。制度の概要、対象者、申請方法などをわかりやすく解説します。


保育所等訪問支援とは

「保育所等訪問支援」は、発達障害や医療的ケアが必要な子どもが、学校などの集団生活にスムーズに参加できるように専門スタッフが現場へ出向いて支援する制度です。

13歳〜18歳の中学生・高校生は、勉強、人間関係、進路など、より複雑な課題に直面する時期です。小学生までの支援とは異なり、本人の意思やプライバシーへの配慮が特に重視されるようになります。


制度の目的

保育所等訪問支援の目的は、発達障害や医療的ケアなどの支援を必要とする児童が、地域の学校や施設で安心して学び、過ごすことができるようにすることです。

13〜18歳の子どもたちは、小学生の頃に比べて、次のような成長段階ならではの悩みや課題を抱えることがあります。

  • 周囲との違いを強く意識するようになる
  • 学業や進路への不安が大きくなる
  • 人間関係が複雑化し、孤立するリスクが高まる

こうした時期に、専門の支援員が学校や通所施設に訪問し、子ども本人・先生・施設職員と一緒に「どうすれば安心して過ごせるか」を考え、支援していくのがこの制度の目的です。


支援内容

6~12歳では、以下のような支援が提供されます。

1. 子どもへの直接支援

支援員は、子どもの気持ちに寄り添いながら、こんな活動を行います。

例:

  • 学校生活で感じている不安やストレスの聞き取り
  • 「困った時にどうすればいいか」「どんな環境が落ち着くか」など、自分に合った過ごし方の提案
  • 本人の特性や課題を一緒に整理して“自己理解”を促すサポート

支援員は、児童発達支援の専門家(言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士など)であり、発達の段階に合わせて個別対応してくれます。


2. 学校の先生や学童の職員への支援方法のアドバイス

支援はお子さま本人だけでなく、学校・教員へ「間接的な支援」も含まれます。

例:

  • 教室内での合理的配慮の提案(例:座席の位置・課題の分け方など)
  • 生徒との関わり方のアドバイス(声かけの工夫や支援方法)
  • 学校全体での支援体制づくりへの協力(保護者・本人を交えたケース会議など)

教員が子どもに合わせた対応をとれるよう、「どう伝えれば良いか」「どんな支援が必要か」を具体的に助言します。


3. 家庭・保護者への支援

例:

  • 家庭での関わり方に関するアドバイス
  • 進路や将来に対する不安を共有し、適切な情報提供
  • 他の支援制度(放課後等デイサービス、相談支援、医療支援など)の紹介


4. 進路・将来を見据えた支援

高校生になると、卒業後の自立や就労に向けた準備も必要になります。

例:

  • 進学・就労に向けた配慮事項の整理
  • 地域の就労移行支援・福祉サービスとの連携
  • 本人の得意・不得意に応じた進路選択のサポート


保育所等訪問支援を利用できる人

13歳~18歳未満の児童(中高生)で以下のいずれかに当てはまる方

  • 中学校や高校など“集団生活の場”に通っている
  • 発達障害や身体障害、知的障害、難病などの診断を受けている
  • 集団生活において特別な支援が必要とされる
  • 自治体が発行する「通所受給者証」保持者

※集団での生活や適応に専門的支援が必要であれば、診断や障害者手帳の有無に関係なく対象となります。


具体的な活用事例

  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)のある高校2年生の男の子
    授業中に音や人の話し声が気になって集中できず、教室での居場所が見つけにくい状態でした。先生に伝えるのが苦手で、ストレスがたまっていたところ、支援員が学校訪問し話を聞いたことで教室内の静かなスペースの確保やリラックスできる環境を確保。

  • 筋ジストロフィーのある中学2年生の女の子
    学校には介助者が不足し、登校や授業中の体調管理に不安がありました。保育所等訪問支援の専門スタッフが定期的に学校を訪問し、教職員や看護師と連携して医療的ケアの方法や体調不良時のマニュアルを支援し、安心して通学できるようになりました。


13歳以下のお子様と異なる支援内容とは?

13歳以下のお子さまは、主に発達の早期支援や日常生活動作のサポート、保育園や幼稚園、放課後デイサービスでの介助が中心です。遊びや生活習慣の支援を重視し、家族への相談・助言も大切にします。

13歳以上のお子様では、学校生活での自立支援や医療的ケアのサポートが強化されます。

学校での授業参加や友人関係の支援、将来の進路や就労に向けた準備も視野に入れた支援が多くなります。


保育所等訪問支援の注意事項

支援制度の利用について、注意しておきたい点を解説します。

  • 学校との連携:学校が制度を知らないケースもあるため、保護者から学校側へ制度の存在を説明する必要がある場合もあります。
  • 本人の意向を尊重:支援を受ける本人の意見や気持ちを大切にし、本人参加型の支援計画を作成することが大切です。
  • 費用負担:通所受給者証を利用して保育所等訪問支援や児童発達支援などの福祉サービスを受ける場合、かかった費用のうち9割が自治体、1割が利用者の負担です。


制度利用の問い合わせ先

基本は「お住まいの市区町村の福祉窓口」

保育所等訪問支援の利用を希望する場合は、まずはお住まいの市区町村(市役所・区役所・町役場)の福祉担当課(障害福祉課・子ども家庭課など)に相談してください。

よくある窓口の名称(地域により異なります)

  • 障害福祉課
  • 子ども福祉課
  • 子育て支援課
  • 発達支援センター
  • 保健センター


「保育所等訪問支援について相談したい」と伝えれば、適切な窓口につないでもらえます。


保育所等訪問支援の申請方法

1. 窓口に相談

保護者が市区町村の福祉窓口に相談します。

「子どもが保育園でうまく過ごせない」「障害があり、集団生活に不安がある」と伝えるとスムーズです。

2. サービス等利用計画の作成

「相談支援専門員」または「指定相談支援事業所」で、子どもの状況に応じたサービス等利用計画を作成します。

※作成支援を無料で受けられる場合もあります。窓口で確認しましょう。

3. 医師の意見書(必要な場合のみ)

医師の診断書や意見書の提出を求められることがあります(障害者手帳は不要です)。

4. 自治体による支給決定

必要性が認められると、「通所受給者証」が交付されます。

5. 事業所選定と利用開始

保護者が希望する保育所等訪問支援の事業所と契約し、支援を開始します。

お住まいの地域によって異なりますが、申請から利用開始まで1〜2か月程度かかる場合があります。


まとめ

「保育所等訪問支援」は、難病や障害のある13歳以上の中高生が、学校生活や地域で安心して過ごせるように支援する制度です。成長期にあるこの年代は、学校での授業参加や友人関係、医療的ケア、将来の進路準備など、さまざまな面でのサポートが必要です。


【参考】