
西村 直子 先生
大手前大学 国際看護学部 教授/大学院 国際看護学研究科 教授。京都大学医療技術短期大学部卒業後、オーストラリアにて看護学士号を取得し、看護師免許を取得。鳥取大学大学院にて保健学博士号を取得。
臨床経験としては、国立循環器病センターおよびオーストラリア・モナッシュメディカルセンターのNICU(新生児集中治療室)にて実践を重ねる。教育・研究分野では、鳥取大学、川崎医療福祉大学を経て、現在は大手前大学にて教鞭を執っている。
国際看護研究所の所員として、また国際的な研究機関であるJBIの大手前大学支部ディレクターとして、国際的な教育・研究活動を推進。特にJBI認定「エビデンス実践プログラム(Evidence Implementation Training Program)」のトレーナーとして、日本発のエビデンスに基づく看護実践コースの指導に尽力している。
主な研究テーマは、子どもの「自己肯定感」「ストレス」「ボディイメージ」。希少疾患である軟骨無形成症を持つ子どもとその当事者に関する心理社会的研究を長年にわたり行っている。また、小児訪問看護ステーションの外部顧問としてすべての子どもが共に生きる社会の実現を目指して活動を続けている。
外見イメージの研究と、乳幼児期からの切れ目ない支援をめざして
大手前大学の西村先生は、子どもが“外見”に抱くイメージや気持ちの変化を探る研究に取り組むとともに、子どもが一生涯にわたって健やかに成長・発達していけるよう、乳幼児期の早い段階から支援できる仕組みづくりにも力を入れています。
その研究の中で出会ったのが、軟骨無形成症の子どもたちとそのご家族です。外見や生活の違いをめぐる思い、成長の中で生まれる課題、そして社会の理解や支援のあり方について、これまで多くの声を丁寧に拾い上げてこられました。
本インタビューでは、研究を始めたきっかけから、子ども・家族のリアルな思い、教育・医療・福祉に求められる支援の形、そして今後の展望まで、西村先生のお話をたっぷりと伺いました。
〇研究を始めたきっかけ
〇外見に対する悩み:必ずしも“問題が表面化する”わけではない
〇学校現場の課題:ゼロか100かではなく“対話”が必要 🔒
〇医療・教育・福祉の連携:親が“コーディネーター”になってしまっている現状 🔒
〇『軟骨無形成症と生きる』について 🔒
〇誰もが支えられる社会をめざして 🔒
〇最後に:医療者・教育者・社会へのメッセージ 🔒
西村先生がこの研究に取り組むようになった背景には、医療現場での原体験があります。看護師として勤務していた頃、医療側の「命に関わらないなら大丈夫」「生活に支障がなければ問題ない」という捉え方と、親御さんの「見た目のことも含めて、子どものすべてが心配」という気持ちとの間に大きな温度差を感じたといいます。
“身体の状態だけでなく、外見が子どもの気持ちにどう影響するのか。その部分をもっと丁寧に理解する必要があるのではないか?”
という疑問が、西村先生の中で次第に強くなっていきました。
大学院では、身長が低い子どもたちが抱えるボディイメージに関する研究に着手。そこで初めて、軟骨無形成症の子どもや家族と深く関わるようになります。
日々の暮らしや学校生活、周囲との関わりの中で、外見の違いはどんな気持ちや行動につながるのか?それが“困りごと”として表に出るのはいつなのか?一人ひとりの語りに耳を傾ける中で、研究の方向性が明確になっていきました。
さらに、外見イメージは心理的側面にとどまらず、進学・就職・対人関係など、生涯に影響しうるテーマであることにも気づきます。そのため、問題が表面化してから支援するのではなく、“もっと早い段階、乳幼児期からの支援が必要ではないか”という考えにたどりつきました。
こうした経験が積み重なり、子どもが外見に抱くイメージの研究、そして乳幼児期からの切れ目ない支援づくりという、現在の西村先生の研究スタイルが形づくられていきました。
西村先生がインタビューを重ねる中で強く感じたのは、外見に関する悩みや葛藤は、他人に見せないように内に秘めて過ごしていることが多いのではないかということです。
軟骨無形成症の子どもたちは、多くの場合、幼いころから自分の身体について非常に正確に理解しています。
保育園・幼稚園の時点で、「自分は背が低い」「他の子と少し違う」という事実を、驚くほど自然に受け止めているケースが多くあります。
しかしそれは、悩んでいない、気にしていないという意味ではありません。
周りの子どもたちと同じように行動できるよう、手の届かない場面では工夫したり、役割分担をしたり、うまく切り替えて生活している姿が多く見られます。
特に幼児期は、本人の明るさや環境の支えもあり、困りごとが“問題”として表面化しにくい時期といえます。
しかし西村先生は、表面化しないだけで内側には確かなストレスが積み重なっている可能性があることを強調します。........

『軟骨無形成症と生きる』著者:西村 直子 先生
西村先生は、軟骨無形成症の患者さんやご家族に丁寧なインタビューを重ね、その声を一冊の本にまとめられました。
本書には、日々の暮らしの中で感じていることや率直な想いが、当事者の言葉で綴られています。
軟骨無形成症について理解を深めたい方はもちろん、医療者・教育者をはじめ、多くの方に手に取っていただきたい一冊です。
ぜひご覧ください。
※軟骨無形成症についての情報がご覧いただけます。
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