軟骨無形成症とともに歩む人生
― 生まれる前の診断から、成長・手術、そして今と未来 ―
軟骨無形成症は、生まれつき骨の成長に特徴があらわれる疾患であり、成長の過程や生活の中で、さまざまな選択や向き合いが求められます。
本記事では、軟骨無形成症のある当事者の方が、生まれる前に診断を受けたところから、幼少期・学童期の成長、骨延長手術という大きな決断、
そして現在の生活に至るまでの歩みを、インタビューを通してたどります。
成長の節目ごとに感じた体の変化や、運動との向き合い方、治療や手術を選択する際の思い、さらに、家族や医療者、学校や職場といった周囲の支えの中で、
どのように日常を築いてきたのかについても語っていただきました。
また近年、軟骨無形成症に対する新たな治療薬の開発が進み、治療の選択肢は大きく変わりつつあります。
「今」と「これから」を見据えながら、当事者だからこそ語れる実感や、これから同じ病気と向き合う方やご家族に伝えたい思いにも触れています。
軟骨無形成症とともに歩んできた一人の人生の記録が、患者さんやご家族にとって、安心や気づき、そして未来を考えるための一助となることを願っています。
〇生まれる前に分かっていた病気
〇幼稚園から小学校へ ― 周囲との差を意識し始めた頃
〇骨延長手術という大きな選択 🔒
〇手術を受けられる環境の問題 🔒
〇日常生活と仕事 ― 「普通に暮らせている」という実感 🔒
〇成長期に大切にしてほしいこと 🔒
〇支援制度と「分からなさ」の壁 🔒
〇新しい治療への期待 🔒
〇最後に ― これから軟骨無形成症と向き合う方へ 🔒

「私の場合、実は生まれる前、母のお腹にいるときに軟骨無形成症であることが分かっていたそうです」
妊娠中のエコー検査で、手足の長さなどから診断され、医師からご両親へ伝えられたといいます。
そのため、ご家族は出産前から病気について説明を受け、ある程度の心構えをした上で迎えることができたそうです。
一方で、出生後すぐに治療や特別な医療的ケアが必要だったわけではありません。
「普段の生活では特に困ることはなく、少し歩き始めが遅いかな、という程度でした」
身体的にも精神的にも、大きな差を感じることなく、幼少期を過ごしました。
成長とともに、少しずつ周囲の子どもたちとの違いが目に見える形で現れてきました。
特に幼稚園の頃になると、身長や体格の差は写真や集合の場面などで自然と浮き彫りになります。
「幼稚園くらいになると、『あれ、この子ちょっと身長が低いな』って、周りから見ても分かるくらいの差が出てきました」
とはいえ、日常生活の中で大きな困りごとがあったわけではありません。

歩く、走る、遊ぶといった基本的な動作は他の子どもたちとほとんど変わらず、本人も特別な意識を持つことなく過ごしていました。
そのため、小学校への入学も、ごく自然な流れとして迎えたといいます。
小学校に入学してからは、体を動かすことが好きだったこともあり、1年生からサッカーを始めました。
友だちと一緒にボールを追いかけ、汗をかく時間は、学校生活の中でも特に楽しいひとときだったそうです。
しかし、サッカーを続けて数年が経った頃、少しずつ体に変化が現れ始めます。
「小学校でサッカーをしているときに、腰に痛みが出てきたんです」
最初は、練習量が増えたことによる一時的な疲労や、運動のしすぎによる痛みだと考えていました。
実際、子どもが運動後に体の痛みを訴えることは珍しくありません。
しかし、痛みは次第に繰り返し起こるようになり、念のため医療機関を受診することになりました。
医師から説明されたのは、軟骨無形成症の特性として、脊椎や腰に負担がかかりやすいという事実でした。
特に、激しい運動や繰り返しの衝撃は、成長期の体に大きな影響を及ぼす可能性があること、場合によっては将来的に
歩行障害につながるリスクもあることが丁寧に伝えられました。
「『このまま続けると、大人になってから歩くのがつらくなる可能性があるから、運動はやめたほうがいい』と言われました」
医師の言葉を受け、最終的にはサッカーをやめるという選択をすることになります。
それは、体を守るために必要な判断である一方で、子どもにとっては大きな喪失体験でもありました。
「正直、悔しかったですね」
友だちが練習を続けている中で、自分だけがグラウンドを離れる。
好きだったスポーツを諦めるという経験は、幼いながらも強く心に残ったといいます。
それでも、この時期の経験が、自分の体と向き合い、無理をしない選択をする大切さを学ぶきっかけになったのかもしれません。