国立精神・神経医療研究センター/小牧 宏文 先生  監修コラム③

SMAのリハビリの充実

― 日常生活とつながるリハビリの考え方 ―


はじめに

脊髄性筋萎縮症(SMA)のある方にとって、リハビリテーションは「特別な訓練」だけでなく、

日常生活を支えるための大切な取り組みの一つです。

身体機能の維持、二次的な合併症の予防、生活のしやすさを高めることを目的として、長期的かつ継続的に関わることが求められます。

しかし、多くのご家族や患者さんがリハビリに対して、

「何をどのくらい行えばよいのか分からない」

「頑張りすぎて体に負担をかけてはいけないのではないか」

といった迷いや不安を抱えることがあります。

SMAの症状や進行は個人差が大きく、年齢や生活環境によっても必要な支援やリハビリ内容は変化します。

そのため、リハビリの方法や目標も一人ひとり異なることを理解することが大切です。

本稿では、SMAのある方とご家族が、リハビリに向き合う際の基本的な考え方を整理しています。

※具体的な内容や頻度については、必ず主治医やリハビリ専門職と相談してください。



1.SMAにおけるリハビリの位置づけ

SMAにおけるリハビリは、「機能を回復させること」だけを目的とするものではありません。


現在の身体機能をできるだけ維持し、日常生活を安全で快適に送るための支援として位置づけられます。

具体的には、次のような目標が考えられます。

  • 関節の可動域を保つことで、拘縮や関節の変形を予防する
  • 姿勢や座位を安定させ、呼吸や嚥下に配慮した体勢を支える
  • 疲労や痛みを軽減し、日常生活の活動量を維持する


また、リハビリは医療機関だけで行うものではなく、家庭や学校、職場など日常生活の場面とつながっていることが大切です。家庭で行うリハビリや遊びの中での身体活動も、日常的なリハビリの一部と捉えることができます。



2.「やりすぎない」ことも大切な視点

リハビリでは「頑張ること」が良いとは限りません。

無理な運動や過度な負荷は、疲労の蓄積や体調悪化につながる可能性があります。

ただし、薬物治療を行っている場合は、主治医・理学療法士(PT)と相談の上、機能向上を目指した積極的なリハビリを行う場合もあります。


日々のリハビリにおけるポイントは次の通りです。

  • その日の体調に応じて内容を調整する
  • 疲れや痛みが残らない範囲で行う
  • 休息や中断もリハビリの一部と考える


また、達成度や回数だけを重視せず、取り組む姿勢や挑戦する気持ちを認めることも大切です。

「できない日があってもよい」という考え方は、継続のために重要な考え方です。



3.日常生活とつながるリハビリの工夫

リハビリは、決められた時間だけに行う訓練ではありません。

日常生活の中で自然に取り入れることで、無理なく継続しやすくなります。

新生児マススクリーニング(NBS)発見例に対しては、訓練的なリハビリではなく、スポーツや遊びを通じた運動発達支援が中心になることが想定されます。


  • 日常動作(着替え、入浴、食事など)の中で姿勢や動きを意識する
  • 遊びや趣味の中に、軽い運動やストレッチを取り入れる
  • 生活環境を整え、座位や姿勢を安定させやすくする


たとえば、テレビを見ながら上肢の軽い運動を行ったり、趣味の作業で手指や腕を使うこともリハビリにつながります。

こうした工夫により、リハビリを「特別な時間」から「生活の一部」へ変えることができます。



4.成長・ライフステージに応じたリハビリ

SMAのある方では、成長やライフステージに応じて、リハビリの目的や内容も変わります。


  • 小児期:発達段階に応じた動きの経験、関節可動域の維持
  • 学齢期:学校生活に必要な姿勢・動作の支援、集団生活での活動を促す
  • 成人期:生活の自立や社会参加を支える視点、疲労管理や筋力維持

年齢や体調の変化に合わせ、リハビリの目標を定期的に見直すことが大切です。



5.リハビリ専門職との連携

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などの専門職と定期的に連携することで、より安全で効果的なリハビリを進められます。


  • 家庭でできることの具体的な指導を受ける
  • 福祉用具や環境調整について相談する
  • 状態の変化を共有し、内容を柔軟に見直す


専門職との連携は、家庭だけで無理に行うリハビリによる疲労やケガを防ぐだけでなく、生活に沿った実践的なリハビリにつながります。



6.家族・介助者ができる関わり方

家族や介助者の関わり方も、リハビリの継続に大きく影響します。


  • できたことを認め、励ます
  • 結果よりも取り組む姿勢を評価する
  • 無理を感じたら中止する判断を尊重する
  • 生活や趣味を通して楽しく体を動かす機会を増やす



介助者自身も無理をせず、自分の休息や気持ちの整理を行うことが、安心で継続的なリハビリにつながります。



7.リハビリを続けるための心構え

リハビリは短期間で効果が出るものではなく、長期的に継続することが重要です。小さな変化や維持できていることを喜び、日々の取り組みの積み重ねとして捉えることが大切です。


  • 成果や回数よりも「取り組み続けること」を大切にする
  • 日常生活での体の使い方や姿勢にも意識を向ける
  • 継続のためには、無理のないペースで休息を取り入れる


「続けられること」そのものが、リハビリの大きな価値です。




おわりに

SMAのリハビリは、生活を支えるための「伴走型の支援」です。

医療・リハビリ専門職、家族、本人が協力しながら、その時々に合った方法を見つけていくことが大切です。


監修:国立精神・神経医療研究センター/ TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)センター長、

脳神経小児科診療部長      小牧 宏文 先生   



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