国立精神・神経医療研究センター/小牧 宏文 先生  監修コラム⑧

脊髄性筋萎縮症(SMA)治療とともに変化する生活:

治療後の「できること」の広がり

はじめに

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、運動神経の働きが低下することで筋力の衰えや日常生活への影響が生じる疾患です。近年、薬物治療などの新しい治療法により、症状の進行を抑えたり、筋力や機能の改善が期待できるようになりました。

また、「早期発見・治療介入による発症予防」「機能改善」「進行停止」が可能になってきています。

治療を受けることで、「これまでできなかったことができるようになる」「日常生活の負担が軽くなる」「機能改善に伴う新たなリハビリや生活設計」といった変化が生じる可能性があります。


患者本人だけでなく、家族や介助者の生活にも影響するため、治療後の変化を正しく理解し、生活に反映させることが重要です。



1.治療による体の変化と日常生活

SMA治療によって期待される変化は、病型や年齢、進行度によって異なります。

主な変化は以下の通りです。


筋力・運動機能の改善

  • 手や腕の力が増し、箸やペンの使用、ボタン操作、ドアの開閉などがしやすくなる
  • 足の筋力や体幹の安定性が向上し、座位保持や歩行、車椅子での移動がスムーズになる場合がある
  • 転倒や疲労のリスクが減り、外出や活動の幅が広がる

呼吸・嚥下機能の安定

  • 呼吸筋が少しずつ強くなることで、息切れや咳のしにくさが改善される可能性がある
  • 嚥下がスムーズになり、誤嚥やむせのリスクが減少することで食事の楽しさや栄養摂取の自由度が広がる

日常生活への影響の具体例

  • 家庭内での移動や身支度が以前より自立できるようになる
  • 学校や職場での活動時間が延び、活動の選択肢が増える
  • 外出や旅行など、家族や友人との社会活動の幅が広がる




2.治療後に意識したい生活上の工夫

治療によって「できること」が増えても、日常生活での安全や体調管理は引き続き重要です。以下の点を意識することが推奨されます。


体力や筋力を維持する

  • リハビリや運動を継続することで、治療効果を最大限に活かす
  • 無理のない範囲で活動量を増やし、疲労や関節への負担に注意する

安全に生活する

  • 姿勢保持や補助具の活用を継続し、転倒や褥瘡のリスクを最小限にする
  • 呼吸や嚥下の変化を観察し、必要に応じて医療者に相談する

社会参加や生活の幅を広げる

  • 学校、職場、趣味、旅行など、新たに挑戦できることを検討する
  • 集団生活での怪我防止や体育への参加調整をする
  • 家族や介助者と情報共有し、無理のない計画を立てる




3.家族・介助者の視点

治療による変化は患者本人だけでなく、家族や介助者の生活にも影響します。


ポイント

  • 介助の負担が軽減される場合がある
  • 外出や学校・職場への送迎、日常生活のサポートの仕方が変化する
  • 患者の「できること」を尊重しながら、安全を確保するバランスが大切


家族や介助者が生活の変化を理解し、適切に支援することで、患者本人の自立や社会参加の機会を最大化できます。



おわりに

SMAの新しい治療により、患者の生活の幅や「できること」は広がります。
しかし、体調管理や安全対策、日常生活の工夫は引き続き重要です。
治療効果を最大限に活かすために、患者・家族・医療チームが一体となって生活を調整していくことが求められます。



監修:国立精神・神経医療研究センター/ TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)センター長、

脳神経小児科診療部長      小牧 宏文 先生   



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