軟骨無形成症 名古屋大学/松下 雅樹 先生 インタビュー

松下 雅樹 先生

平成14年5月1日 社会保険中京病院研修医

平成16年4月1日 社会保険中京病院整形外科

平成22年4月1日 あいち小児保健医療総合センター整形外科

平成23年5月1日 名古屋大学医学部附属病院整形外科医員

平成26年4月1日 名古屋大学医学部附属病院整形外科病院助教

令和元年6月1日 名古屋大学大学院医学系研究科障害児(者)医療学寄付講座助教

令和3年7月1日 名古屋大学医学部附属病院整形外科病院講師



「選択肢を提示することが、医療の役割」

名古屋大学 松下雅樹先生 インタビュー

― 軟骨無形成症と向き合う、診療と研究の最前線 ―

名古屋大学で長年にわたり軟骨無形成症の診療と研究に携わってこられた 松下雅樹 先生にお話を伺いました。

名古屋大学において数多くの患者さんと向き合いながら、基礎研究から臨床、さらには治療法の開発に至るまで幅広く取り組んでこられた先生。
その歩みは、日本における軟骨無形成症医療の発展そのものと重なる部分も少なくありません。

今回のインタビューでは、これまでの診療経験や研究の裏側、そして治療の選択肢が広がりつつある現在の医療状況について、
時間をかけて丁寧に語っていただきました。

終始穏やかな語り口でありながら、その言葉の一つひとつには強い責任感と覚悟がにじみます。

印象的だったのは、「患者さんが満足できる医療を提供することが何より大切」という姿勢を、繰り返し強調されていたことです。
医学的に正しいかどうかだけではなく、患者さんやご家族が納得し、自分自身で選択したと感じられる医療であるかどうか
——その視点を何よりも大切にされていることが伝わってきました。

治療法が増え、選択肢が広がる時代だからこそ、医療者が一方的に方向性を示すのではなく、情報を整理し、
可能性と課題の両方を率直に伝えたうえで「どうしたいですか」と問いかける。その積み重ねが信頼関係を築き、
患者さんの人生に寄り添う医療につながるのだと感じさせられる時間でした。


単なる医療解説ではなく、「医療とは何か」「支えるとはどういうことか」を改めて考えさせられる、非常に示唆に富んだ内容となりました。


インタビュー目次

〇医師を志した原点

〇軟骨無形成症との出会い

〇軟骨無形成症とは何か 🔒

〇2022年、治療の転換点 🔒

〇骨延長術という選択肢 🔒

医療で大切にしていること 🔒

データから見えたこと 🔒

医療以外の課題 ― 社会の理解 🔒

患者さん・ご家族へ 🔒


医師を志した原点

先生のご実家は歯科医院。幼い頃から医療が身近にある環境で育ち、自然と「医療の道」は将来の選択肢のひとつになっていたといいます。
当初は家業を継ぐことも視野に入れ、歯学部への進学を考えていた時期もありました。


しかし、進路を具体的に考えるなかで、次第に芽生えてきた思いがありました。

「より広い分野を見てみたい。できるだけ多くの選択肢を持てる道に進みたい」

医療の世界に進むのであれば、特定の領域に早くから絞るのではなく、まずは医学全体を学び、その中で自分が本当に向き合いたい分野を見つけたい
——そんな思いが強くなり、医学部への進学を決意されたそうです。

高校生の頃から「将来はこの診療科に進みたい」と明確に決めていたわけではありませんでした。
むしろ、可能性を狭めないことを大切にしていたといいます。
「さまざまな可能性を持てる道」を選んだことが、結果的に医師としての原点となりました。

医学部で幅広い分野を学ぶなかで、次第に心を惹かれていったのが整形外科でした。
その理由は、「機能を回復させる医療」という点に強い魅力を感じたからだといいます。


「他の外科手術は“取る”ことで機能が落ちることもありますが、整形外科は手術によって“機能が良くなる”ことを実感できる。それがやりがいでした。」


痛みで歩けなかった人が歩けるようになる。手が上がらなかった人が日常動作を取り戻す。脊椎の圧迫を解除することで生活の質が向上する——。
治療の結果が、患者さんの“動き”や“生活”として目に見えて現れることに、大きな手応えを感じたと語ります。


単に病変を取り除くのではなく、「その人の生活を取り戻す」ことにつながる医療。そこに整形外科の本質的な価値を見出し、
この道を専門とすることを決められました。


振り返れば、「選択肢を広く持ちたい」という若き日の思いは、その後の診療姿勢にも通じています。
ひとつの正解を押しつけるのではなく、可能性を提示し、その人にとっての最善を共に考える——。
医師を志した原点は、現在の医療観へと確かにつながっているように感じられました。


軟骨無形成症との出会い

名古屋大学整形外科には、長年にわたり軟骨無形成症の患者さんを診療してきた歴史があります。
小児期から成人期まで継続的にフォローし、手術治療にも積極的に取り組んできた実績があり、全国から患者さんが紹介される体制が築かれてきました。
そうした診療の積み重ねがある環境の中で、先生はこの疾患と向き合うことになります。


直接のきっかけは、大学院時代に与えられた研究テーマでした。軟骨無形成症の治療薬開発に関わる基礎研究を担当することになったのです。
当時はまだ「原因にアプローチする治療」は存在せず、治療の中心は成長ホルモンや骨延長術でした。
分子レベルで病態を理解し、シグナル伝達をどう制御するかを探る研究は、将来の治療の可能性を切り拓く挑戦でもありました。


先生は当時を振り返り、こう語ります。

「患者さんを診るより先に、研究から入ったんです」


多くの医師が臨床現場で患者さんと出会い、その課題意識から研究へ進むのに対し、先生はその逆でした。
まず研究室で疾患の仕組みに向き合い、遺伝子や成長軟骨で起きている現象を学ぶところから始まったのです。
細胞や動物モデルを通して病態を理解しようとする日々は、決して華やかなものではありません。
しかし、その時間があったからこそ、「なぜこの症状が起きるのか」「どこに介入すれば変えられるのか」という視点が養われました。


やがて臨床の現場で実際の患者さんと向き合うようになったとき、研究で学んだ知識は単なる理論ではなく、
一人ひとりの生活や人生と直結するものへと変わります。
身長の問題だけでなく、脊柱管狭窄症や合併症、日常生活での困難——教科書の記述の向こう側に、具体的な「暮らし」があることを実感したといいます。


研究から入ったからこそ、常に「この治療は病態にどう作用しているのか」「長期的にどんな影響が考えられるのか」という問いを
持ち続ける姿勢が自然と身につきました。そして臨床に立つからこそ、「研究成果をどう患者さんの利益につなげるか」という視点が生まれます。


こうして先生の中に、「研究と臨床の両輪で疾患と向き合う」という現在のスタイルが形づくられていきました。
基礎研究で未来の可能性を探りながら、目の前の患者さんにとって最善の選択を共に考える。
その原点は、大学院時代の“研究から始まった出会い”にあったのです。




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