2026/06/04公開
はじめに
梅雨の時期は、雨の日が続き、湿度が高くなり、気圧や気温も変化しやすくなります。
難病患者さんの中には、この時期に「いつもより疲れやすい」「頭痛やめまいが出やすい」「痛みやしびれが強くなる」「通院がつらい」と感じる方も少なくありません。
もちろん、梅雨の不調の出方は病気の種類や症状、治療内容、生活環境によって異なります。大切なのは、すべてを完璧に対策しようとすることではなく、自分の体調に合わせて、できることから備えることです。
この記事では、難病患者さんやご家族に向けて、梅雨時期の体調管理、室内環境、外出・通院、薬や医療機器の管理、活用できる支援制度や相談先について紹介します。
体調に合わせてできる工夫を取り入れながら、梅雨から暑い季節を少しでも安心して過ごすための参考にしてください。

1. 梅雨はなぜ体調を崩しやすい?
梅雨の不調には、湿度の高さ、気圧の変化、気温差、日照時間の少なさなどが関係すると考えられています。
雨や曇りの日が続くと、体が重く感じたり、眠気やだるさが強くなったりすることがあります。気圧や温度・湿度の変化による不調は「気象病」「天気痛」と呼ばれることもあり、頭痛、めまい、倦怠感、気分の落ち込みなどが現れる場合があります。気象病については、医療機関の解説でも、気圧・温度・湿度の変化と体調不良の関係が紹介されています。
難病患者さんの場合、もともとの症状や治療の影響に加えて、梅雨特有の環境変化が重なることで、体調の波を感じやすくなることがあります。
たとえば、次のような不調が出やすくなることがあります。

体調の変化を「気のせい」と片づけず、天気や気圧、睡眠、活動量とあわせて記録しておくと、主治医や支援者に相談するときにも役立ちます。
▼参考リンク:
日本医師会健康ぷらざ「健康ぷらざバックナンバー【2021年】」(日本医師会健康ぷらざ)
【出典:くすりと健康の情報局(第一三共ヘルスケア)】
・「気象病」は気圧や温度・湿度の変動などで起こるさまざまな不調
梅雨時期は、屋外だけでなく室内環境も体調に影響します。
湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体に熱がこもりやすくなります。また、カビやダニが増えやすくなるため、呼吸器症状やアレルギーがある方は注意が必要です。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、屋内でもエアコンなどを適切に使い、涼しい環境で過ごすこと、こまめな休憩や水分・塩分補給を行うことが呼びかけられています。
梅雨時期の室内対策としては、右のような工夫があります。
特に、体温調節が難しい方、汗をかきにくい方、筋力低下や呼吸器症状がある方は、室内にいても暑さや湿気の影響を受けることがあります。「外に出ていないから大丈夫」と考えず、室内環境を整えておくことが大切です。
▼参考リンク:
障害のある方、災害時などの資料が揃っています。

熱中症というと真夏の炎天下をイメージしがちですが、梅雨時期にも注意が必要です。
気温がそれほど高くなくても、湿度が高い日は汗が蒸発しにくく、体の熱を逃がしにくくなります。
環境省は、暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラートを確認し、涼しい環境で過ごすこと、こまめな水分補給・塩分補給を行うことを呼びかけています。
▼参考リンク:
難病患者さんでは、右のような場合に脱水や熱中症のリスクが高まることがあります。

対策としては、のどが渇く前に少しずつ水分をとる、外出前後に水分補給をする、主治医から水分や塩分について指示を受けている場合は、その指示に従う、といった工夫が考えられます。
水分や塩分の取り方は、心臓・腎臓・内分泌疾患などの有無によって注意点が異なります。持病や治療内容によって制限がある方は、自己判断で水分や塩分を増やしすぎず、主治医や管理栄養士に確認しておくと安心です。
▼参考リンク:
■腎臓病・透析など、水分や塩分制限がある方への注意
CKD、特にステージ4以降や透析中の方では、水分・塩分の過剰摂取が腎不全悪化や心不全につながる可能性があること、スポーツドリンクや塩飴なども医師に確認する必要があることが説明されています。
・腎臓教室 Vol.105(2019年6月号)(腎臓病なんでもサイト NPO法人 腎臓サポート協会)
■高血圧・塩分制限がある方への補足
・夏の日常生活における水分と塩分の摂取について:熱中症予防と高血圧管理の観点から(日本高血圧学会)
4. 外出・通院時に気をつけたいこと
梅雨の外出は、雨具や荷物が増えるだけでなく、足元が滑りやすくなり、体力も消耗しやすくなります。杖、車いす、装具、酸素ボンベ、吸引器などを使っている方にとっては、雨の日の移動そのものが大きな負担になることもあります。
外出・通院時には、次のような準備が役立ちます。

雨の日の屋外移動は、転倒や体力消耗のリスクがあり、通院や外出が大きな負担になることがあります。外出や通院、買い物などの負担が続く場合は、障害福祉サービスや自治体独自の移動支援、交通費助成などを利用できる可能性があります。
利用できる制度や申請方法は自治体によって異なるため、支援制度については、後半の「7. 梅雨時期に活用したい支援制度・助成制度」でも紹介します。
また、通院は大切ですが、「無理をして行くこと」がかえって体調悪化につながる場合もあります。大雨や強風の日、発熱や強い倦怠感がある日は、事前に医療機関へ連絡し、予約変更や受診方法について相談してみると安心です。
▼参考リンク:
5. 薬や医療機器を湿気・雨から守る
梅雨時期は、薬や医療機器の管理にも注意が必要です。
薬の中には、湿気や高温、直射日光の影響を受けやすいものがあります。医師や薬剤師から特別な指示がない限り、薬は直射日光や高温多湿を避け、なるべく湿気の少ない涼しい場所で保管しましょう。風呂場の近くや窓際、車の中などは避け、薬の袋や説明書も保管しておくと安心です。
外出時には、薬、お薬手帳、保険証、特定医療費(指定難病)受給者証などを、防水ポーチやチャック付き袋にまとめておくと、雨で濡れるリスクを減らせます。通院日だけでなく、急な体調不良や天候悪化に備えて、必要なものをまとめておくと、急な外出時にも確認しやすくなります。
在宅酸素、人工呼吸器、吸引器、経管栄養ポンプなどを使用している方は、機器やコード、接続部が濡れないよう注意が必要です。また、停電時にも機器を使い続けられるよう、外部バッテリーや予備電源、酸素ボンベ、吸引器の代替手段、消耗品の残量などを日頃から確認しておきましょう。
確認しておきたいポイントは、次の通りです。

特に医療機器を使用している方は、停電や機器トラブルが体調に直結することがあります。機器の使い方や非常時の対応について不安がある場合は、主治医、訪問看護ステーション、機器業者に確認しておきましょう。
▼参考リンク:
・在宅で人工呼吸器を御使用の方及びその御家族等の方へ(停電への備え)(福岡県)
・内閣府 防災情報のページ「令和3年度 個別避難計画作成モデル事業報告書 別冊目次」
※「⑤在宅医療機器非常用電源の確保に関する地域の取組事例」参照
6. 症状がつらい日の過ごし方
梅雨時期は、予定通りに動けない日が増えることがあります。
そのような日は、「今日はできない」と感じる自分を責めるのではなく、体調に合わせて過ごし方を調整することが大切です。
つらい日の工夫としては、次のようなものがあります。

気象病や天気痛の対策として、痛みや不調と天気の関係を記録することは、自分の不調の傾向に気づく手がかりになります。たとえば、痛みやだるさが強かった日、睡眠時間、天気、気圧の変化、外出の有無などを簡単にメモしておくと、主治医や支援者に相談するときにも役立ちます。
また、雨の日が続くと、外出の機会が減り、気分が落ち込みやすくなることもあります。患者会や難病相談支援センター、オンライン交流会などを活用し、同じような経験を持つ人の声に触れることも、孤立感を和らげる助けになる場合があります。
▼参考リンク:
・日本医師会健康ぷらざ「健康ぷらざバックナンバー【2021年】」(日本医師会健康ぷらざ)
7. 梅雨時期に活用したい支援制度・助成制度
梅雨対策は、体調管理だけではありません。
通院、外出、在宅療養、医療費、災害時の備えなどに不安がある場合は、支援制度や助成制度の活用も大切です。
指定難病の治療では、通院、検査、薬の処方などが継続的に必要になることがあります。医療費の負担が気になる場合は、指定難病医療費助成制度の対象になるかを確認しておくことが大切です。
この制度では、対象となる指定難病について、一定の基準を満たした場合に医療費の自己負担を軽減できる可能性があります。助成を受けるには、申請を行い、認定後に交付される特定医療費(指定難病)受給者証が必要です。
梅雨時期は、雨の日の通院や体調不良による受診、薬の管理などが負担になりやすい時期です。特定医療費(指定難病)受給者証をすでに持っている方は、更新時期、自己負担上限額、指定医療機関、薬局の登録状況などを確認しておくと安心です。これから申請を考える方は、お住まいの都道府県・指定都市の窓口や、医療機関の相談窓口に確認してみましょう。
▼参考リンク:
・障害者総合支援法による福祉サービスの利用については、どのような人が対象になりますか?(WAM NET)
難病患者さんは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス等の対象となる場合があります。厚生労働省の周知用リーフレットでは、対象疾病に該当する方は、障害者手帳がなくても、必要と認められた支援を受けられる場合があると案内されています。
梅雨時期は、雨の日の外出や通院、買い物、入浴、家事などが普段より負担になりやすい時期です。たとえば、体調が悪い日や足元が不安な日には、居宅介護によって入浴・排せつ・食事などの支援を受けられる場合があります。また、介護をする家族の体調不良や休息が必要な場合には、短期入所、いわゆるショートステイが利用できることもあります。
梅雨時期の困りごとに合わせると、次のような相談につながる可能性があります。
利用できるサービスや申請方法は自治体によって異なります。雨の日の通院や外出、在宅生活に不安がある場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談してみましょう。千葉市のページでは、難病患者さんが障害福祉サービス等を利用する場合、対象疾病にかかっていることが分かる証明書を持参し、各区の保健福祉センターで申請する流れが案内されています。
▼参考リンク:
・難病患者が利用できる障害福祉サービス(障害者総合支援法)(かんしん広場)
※ページ内「令和7年4月から/周知用リーフレット」参照
日常生活用具の給付
日常生活用具給付等事業は、市町村が実施する地域生活支援事業の一つです。障害者、障害児、難病患者等を対象に、日常生活をしやすくするための用具を給付または貸与する制度です。
厚生労働省は、対象者に「日常生活用具を必要とする障害者、障害児、難病患者等」を含めています。
梅雨時期は、湿気や気温差、雨による外出のしづらさなどが重なり、体調によっては、入浴や排せつ、室内での移動、寝具まわりの管理、意思疎通や情報確認など、普段の生活動作が思うようにいかなくなることがあります。こうした困りごとが続くときは、日常生活用具を活用することで、自宅での生活を少し楽にできる場合があります。どの用具が対象になるかは自治体によって異なるため、購入前に市区町村の障害福祉担当窓口へ確認してみましょう。
対象となる品目は自治体によって異なりますが、排せつや入浴を助ける用具、移動や安全確保に関わる用具、在宅療養に関わる用具、情報・意思疎通を支援する用具などが含まれる場合があります。自己負担額、申請方法、医師の意見書の要否も自治体によって異なります。

ただし、日常生活用具の対象品目や条件は自治体ごとに異なります。必要だと感じる用具がある場合は、購入する前に、市区町村の障害福祉担当窓口へ確認することが大切です。自治体によっては、申請前に購入したものは給付対象にならない場合があります。
▼参考リンク:
・難病受給者証を日常生活で賢く活かす10のポイント(かんしん広場)
福祉タクシー券・交通費助成
雨の日の通院や外出が大きな負担になる方には、自治体独自の福祉タクシー券や交通費助成が利用できる場合があります。
たとえば、東京都目黒区では、区で指定する特殊疾病(難病)の方で、東京都発行の特定医療費(指定難病)受給者証の交付を受けている方などを対象に、福祉タクシー利用券の給付を行っています。
ただし、対象者や金額、利用条件は自治体によって大きく異なります。お住まいの市区町村で「福祉タクシー券」「移送サービス」「交通費助成」「難病 通院 助成」などの名称で確認してみてください。
▼参考リンク:
梅雨から台風シーズンへ、大雨・停電への備えを
梅雨から台風シーズンにかけては、大雨、土砂災害、浸水、停電への備えも必要です。
薬や医療機器そのものの備えに加えて、避難が必要になった場合の移動方法や避難先、支援者との連絡方法についても確認しておくことが大切です。特に、医療機器を使用している方、移動に介助が必要な方、避難所での生活に不安がある方は、平常時から家族や支援者と話し合っておきましょう。
内閣府の資料では、在宅人工呼吸器装着者は平常時からの災害対策が重要で、個別避難計画を早期に作成すべき対象として示されています。自治体によっては、災害時に自力で避難することが難しい方を支援するため、避難行動要支援者名簿や個別避難計画の作成を進めています。
自分や家族だけで避難が難しい場合は、市区町村の防災担当、障害福祉担当、保健所、訪問看護ステーションなどに相談してみましょう。避難が必要になったときに、誰に連絡するのか、どこへ避難するのか、医療機器や薬をどう持ち出すのかを、事前に確認しておくと安心です。
防災の備えは、非常持ち出し袋、在宅避難、福祉避難所、医療機器の電源確保など、確認することが多くあります。詳しい準備については、かんしん広場の防災関連記事でも紹介しています。
▶かんしん広場の詳しいページはこちら:
・障害のある方・ご家族向け防災ガイド|非常持ち出し袋や避難の備え― いざというとき、少しでも安心して行動するために ―
・【難病×防災】難病患者のための防災対策完全ガイド|在宅避難・福祉避難所・医療体制まで解説
▼参考リンク:
内閣府 防災情報のページ「令和4年度個別避難計画モデル事業最終報告書 別冊」(みんなの防災情報ページ)
※「2.参考資料」内の「③ 災害時難病患者個別避難計画を策定するための指針(追補版)」参照
梅雨時期の不調は、休息や室内環境の調整で軽くなることもありますが、中には早めの受診や相談が必要な場合もあります。
次のような症状があるときは、無理をせず、主治医やかかりつけ医、訪問看護ステーションなどに連絡しましょう。
梅雨時期の不調は、休息や室内環境の調整で軽くなることもありますが、中には早めの受診や相談が必要な場合もあります。
次のような症状があるときは、無理をせず、主治医やかかりつけ医、訪問看護ステーションなどに連絡しましょう。

熱中症が疑われる場合、厚生労働省は「自力で水が飲めない」「意識がない」場合には、すぐに救急車を呼ぶ目安として案内しています。迷ったときは自己判断で無理をせず、医療機関や地域の救急相談窓口に確認しましょう。
相談先としては、主治医、かかりつけ医、薬局、訪問看護ステーション、ケアマネジャー、相談支援専門員、保健所、市区町村の障害福祉窓口などがあります。難病に関する療養生活や日常生活の不安、制度利用については、地域の難病相談支援センターに相談できる場合もあります。
▼参考リンク:
※難病相談支援センターの窓口や名称は、地域によって異なります。
梅雨は、湿気、気圧、気温差、雨による外出のしづらさなどが重なり、難病患者さんにとって体調管理が難しくなりやすい時期です。
大切なのは、無理をして普段通りに過ごそうとすることではなく、体調の変化に早めに気づき、環境を整え、必要な支援につながることです。
室内の湿度・温度を整える、
熱中症や脱水を防ぐ、
雨の日の通院方法を見直す、
薬や医療機器を守る、
そして支援制度や相談先を確認しておく。
こうした小さな備えが、梅雨時期の不安を軽くする助けになります。
「このくらいで相談してよいのかな」と迷うときほど、早めに主治医や支援者、自治体窓口に相談してみましょう。
梅雨を少しでも安心して過ごすために、自分の体調に合った対策を、できるところから始めてみてください。
