脊髄性筋萎縮症 体験談インタビュー③


不安と向き合いながら、前へ― SMAの三男と家族の歩み ―

脊髄性筋萎縮症(SMA)のお子さんを育てるお母さまに、日々の暮らしや病気との向き合い方について詳しく伺いました。

今回お話を聞かせてくださったのは、3人兄弟のお母さま。三男がSMAを患っており、上にはお兄ちゃんが2人います。家族にとって、三男と過ごす毎日は愛情と工夫にあふれる時間である一方、医療の選択や制度、社会のさまざまな障壁とも向き合わなければならない現実があります。

インタビューでは、三男の成長過程を中心に、診断がつくまでの不安な時間、治療の開始、学校生活や地域での支援、さらに制度の利用や情報収集の工夫まで、幅広くお話をお聞きしました。


インタビュー目次

〇小さな違和感から始まった日々

〇診断がもたらした「安心」と、次なる課題

〇患者会とのつながりが心強い支えに 🔒

〇小学校入学――地域の学校で学ぶために 🔒

〇放課後の居場所の課題 🔒

小さな違和感から始まった日々

三男の成長の節目で、家族が最初に違和感を覚えたのは「寝返り」の時期でした。

「生後しばらくして、そろそろ寝返りができるはずなのに、返りそうで返らない。そんな状態が続いていました」

そう振り返るお母さま。上に二人のお兄ちゃんがいるからこそ、一般的な成長の流れは自然と身についていました。

かかりつけ医に相談し、10か月健診の結果を受けて総合病院を紹介され、リハビリが始まりました。しかし、すぐに診断がつくことはなく、「これでもない、あれでもない」と原因を探す手探りの時間が続きます。

「リハビリを続けても、目に見える改善はありませんでした。当時はただ不安が募るばかりでした。子どもがこれからどう成長していくのか、何を期待していいのかもわからず、もどかしさと心配でいっぱいでした」

診断がつくまでの約10か月間は、「暗闇の中を走り続けているような感覚」だったといいます。その頃の記憶は、ほとんど残っていないと語ってくれました。

診断がもたらした「安心」と、次なる課題

確定診断が下りたのは、三男が2歳の誕生日を迎える1週間前のことでした。

その後、専門医のいる大阪の病院へ紹介され、治療が始まります。

「正直に言うと、最初に“SMA”と聞いても、すぐには理解できませんでした。ただ、原因がわからないまま過ごしていた時間に比べると、病名がついたことで少し安心したのは確かです。何が起きているのかが、ようやく見えるようになった気がしました」

確定診断を受けたときの気持ちは、戸惑いと同時に「やるべきことが見えた」という感覚だったといいます。

「今は治療薬がある」と医師から伝えられたことで、わずかながらも希望を感じることができました。絶望と希望のあいだを、行き来するような心境だったそうです。

一方で、当時は情報が限られており、治療薬やリハビリの選択については、依然として手探りの状態が続きました。

「どの治療がこの子にとって最適なのか」「このタイミングで本当に進めてよいのか」

判断を迫られる場面も多く、迷いが尽きることはありませんでした。

診断は一つの区切りであると同時に、次の課題が始まる瞬間でもありました。......


☆本記事は、一般社団法人SMA家族の会のご紹介・ご協力のもとに作成しました。

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