診断をきっかけに生まれた患者家族会活動
8歳でSTXBP1関連脳症という診断にたどり着いた手塚さんご家族。
長年探し続けてきた「病名」が分かったことで
大きな安心を得られた一方、新たな課題にも直面しました。
それは、「STXBP1関疾患は超希少疾患で、同じ病気の人に出会うのが難しい」ということでした。
診断当時、日本国内にはSTXBP1に特化した患者会はなく、
インターネットで検索しても日本語の情報はほとんど見つかりません。
主治医から病気の説明を受けても、実際にどのような経過をたどるのか、
将来どのような生活になるのか、参考にできる体験談はほぼありませんでした。
「診断はついたけれど、そこから先の情報が何もなかったんです。」
一方で英語圏ではSTXBP1は超希少疾患ながらも
情報が日本語圏よりも多くあり、また米国を中心に世界では患者家族会があることがわかりました。
米国の患者家族会やその代表の方とのやり取りを通じ、
日本での患者家族会の活動が治療法確立に向けて重要な取り組みになることもわかってきました。
同じ悩みを抱える家族がどこかにいるはず。
そう考えたご夫婦は、自ら情報発信を始めることを決意します。
SNSやインターネットを通じて少しずつ仲間を探し始めると、
国内にも同じ病気のお子さんを育てているご家族がいることが分かってきました。
「自分たちだけじゃなかった。」
その事実は大きな励みになったといいます。
そして2025年、同じ立場の家族同士がつながり、
情報交換できる場をつくりたいという思いから、STXBP1 Japan患者家族会を設立しました。
患者や家族が孤立せず、必要な情報にたどり着ける環境をつくること。
そして同じ患者家族会がつながり治療法確立に向けて推進すること。
それが患者家族会設立の原点でした。
〇海外患者会との出会い ― 世界中に仲間がいることを知って
〇患者家族会活動と創薬・治療法確立への期待 ― 未来につなぐために今できること
〇同じ立場のご家族へのメッセージ 🔒

手塚さんご夫婦は、米国の患者会との出会いを通じて、日本での患者家族会の立ち上げ決意されました。
診断を受けた当時、日本国内にはSTXBP1に関する情報がほとんどなく、
同じ病気の患者家族とつながる機会も限られていました。
「診断はついたものの、この先どうなっていくのか、どんな治療研究が進んでいるのか、
日本語で得られる情報は本当に少なかったんです。」
そんな中、ご夫婦はインターネットを通じて海外の患者団体の存在を知ります。
海外ではすでにSTXBP1の患者団体が組織されており、研究支援や情報発信、患者家族同士の交流、
さらには創薬や治験に向けた活動まで積極的に行われていました。
「最初に見た時は本当に驚きました。日本では検索をしても情報をなかなか得られない病気なのに、
海外にはこんなにもたくさんの家族がいて、活動しているんだ、と。」
もちろん、最初は言葉の壁もありました。
専門用語の多い研究論文や海外患者会の情報を理解するのは簡単なことではありません。
それでも、ご夫婦は翻訳ツールを使いながら一つひとつ情報を読み進めていきました。
分からない言葉を調べ、海外のウェビナーを視聴し、患者会の発信を追い続ける日々。
そうした中で、日本ではまだほとんど知られていなかった研究情報や、
世界各地で進められている治療開発の動きに触れることができたといいます。
「診断がついたことで終わりではなく、そこから先に研究や治療開発の可能性があることを知れたのは大きかったですね。」
また、海外の患者家族との交流を通じて感じたのは、国や文化が違っても抱える悩みは驚くほど共通しているということでした。
発作への不安。
発達の遅れへの悩み。
将来への見通しが立たない苦しさ。
そして、診断までの長い道のり。
「話していると、『うちも同じです』ということばかりだったんです。」
なかには、生後間もなく発症したお子さんを育てている家族もいれば、
思春期や成人期を迎えた患者さんの家族もいました。
それぞれ症状や経過は異なるものの、「子どものためにできることを探し続ける」という思いは共通していました。
「日本にはSTXBP1 に関する情報がなく、周りにも同じ疾患の方がいなかったので、
治療に向けて何ができるか、など、最善の選択をとるために時間がかかりました。
でも世界に目を向けると、同じ病気と向き合っている家族がたくさんいる。
そのことを知れただけでも気持ちが大きく変わりました。」
さらに、海外患者会の活動を知ったことで、ご夫婦の中には新たな思いも芽生えていきます。
それは、「日本にも患者家族がつながれる場所を作りたい」という思いでした。
海外では患者家族会が中心となって家族同士の交流会を開催したり、
研究者や製薬企業と連携したりする姿がありました。
患者や家族が単に支援を受ける存在ではなく、
研究や治療開発を前に進める大切なパートナーとして活動していることに大きな刺激を受けたといいます。
現在も海外患者会との交流は続いています。
「世界中の患者さんやご家族、研究者の方々が
同じ目標に向かって進んでいることを知るたびに希望を感じます。」
海外患者会との出会いは、ご夫婦にとって単なる情報収集の機会ではありませんでした。
孤独の中で病気と向き合ってきた家族が、「世界には仲間がいる」と実感し、
そして日本で新たな一歩を踏み出すきっかけとなった大切な出会いだったのです。
現在、STXBP1 Japanでは、患者さんやご家族同士の交流会の開催をはじめ、
情報発信、医療者や研究者との連携、医師による勉強会、学会へのブース出展など
さまざまな活動に取り組んでいます。
診断を受けたばかりのご家族への情報提供や相談対応も重要な活動の一つです
「診断されたばかりの頃は、病名を検索してもほとんど情報が出てこなくて、本当に不安でした。」
だからこそ今は、自分たちが経験してきたことを少しでも次のご家族に
伝えたいという思いで活動を続けています。
交流会では、発作への対応や日常生活の工夫、学校や福祉サービスの利用についてなど、
医療情報だけでは分からない実体験が共有されています。

「同じ病気の家族だからこそ分かり合えることがあります。
交流会で『うちも同じです』という言葉を聞くだけで、救われる方もたくさんいるんです。」
また、活動を続ける中で、ご夫婦が強く感じるようになったのが「患者の声の重要性」でした。
希少疾患は患者数が少ないため、病気そのものに関する情報が限られています。
どのような症状があるのか。
どのような経過をたどるのか。
患者さんや家族は日常生活でどのような困難を抱えているのか。
そして、どのような支援や治療を求めているのか。
そうした情報は、実際に病気と向き合う患者さんやご家族から集めていかなければ見えてきません。
「患者会は単なる交流の場ではなく、患者の声を社会に届ける役割もあると思っています。」
実際に、患者会を通じて集まった情報は、研究者や医療者が病気を理解するための貴重な資料にもなります。
また、治療法開発を進めるうえでも、患者さんや家族の実態を知ることは欠かせません。
どのような症状が生活に大きな影響を与えているのか。
どのような改善が患者さんや家族にとって本当に価値のある変化なのか。
そうした「患者視点」は、創薬や研究を進める上で非常に重要な要素になっています。
近年、STXBP1関連疾患に対する研究は世界的に大きく進展しています。
ご夫婦も海外患者会との交流を通じて、その動きを身近に感じているといいます。
「診断がついた頃は、正直なところ治療の情報を見つけることは出来ませんでした。
でも今は世界中で研究が進み、実際に創薬に向けた取り組みが動いています。」
もちろん、研究が進んでいるからといって、すぐに治療薬が完成するわけではありません。
安全性の確認や臨床試験など、多くの段階を経る必要があります。
期待が大きいからこそ、慎重に見守らなければならない部分もあります。
それでも、ご夫婦は未来への希望を感じていると話します。
「以前は『何もない』状態でした。でも今は違います。
研究してくださる先生方がいて、患者会があって、世界中で同じ目標に向かって進んでいる人たちがいます。」
そして、その未来を少しでも前に進めるために、患者会としてできることを続けていきたいと考えています。
患者家族同士をつなぐこと。
病気について社会に知ってもらうこと。
研究者や医療者と協力しながら情報を集めること。
一つひとつは小さな活動かもしれませんが、その積み重ねが将来の治療方開発につながる可能性があります。
「遠くない未来に、治療法確立に向けて取り組みを推進させたいと思っています。
娘や患者家族会に参加している患者の方の治療を目指しています。」
診断がつかず悩み続けた日々を経験したご家族だからこそ、
未来への希望をつなぐ活動の大切さを誰よりも実感しています。
STXBP1 Japanの活動には、「今困っている家族を支えたい」という思いと、
「いつか治療法が生まれる未来につなげたい」という願い、その両方が込められているのです。
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