難病で働き続けることが難しいときに
- 退職前後の手続きと利用できる支援制度 -

2026/08/04 公開

症状や治療のために、仕事を続けることが難しくなることがあります。

退職は決して失敗ではなく、体調や生活を守るために必要な選択となる場合もあります。

ただし、退職日や退職前の状況によって、傷病手当金などの利用に影響することがあります。

退職してから制度を調べるのではなく、退職届を出す前に、会社、加入している健康保険、ハローワークなどへ確認することが大切です。

誰かに相談できますか?相談窓口はあるのでしょうか?

仕事を続けることに不安を感じたときは、一人で退職を決める前に、相談窓口を利用しましょう。

勤務先では、上司や人事・労務担当者、産業医などに、勤務時間や業務内容、休職について相談できます。

病院の医療ソーシャルワーカーには、治療と生活、利用できる制度について相談できます。

また、各地域の難病相談支援センターでは、療養生活や就労に関する相談を受け付けています。

ハローワークの難病患者就職サポーターには、現在の仕事を続けるための相談や、退職後の再就職について相談できます。

相談することで、勤務時間の調整や休職、支援制度など、退職以外の選択肢が見つかることもありますので、まずは一人で悩まずに相談窓口を利用しましょう。


働き続けることが難しいと感じたときに考えたいこと

退職を決める前に、今の働き方を変えることで続けられないか、まずは確認してみましょう。

たとえば、休職して治療に専念する、勤務時間を短くする、通院日に休めるようにする、担当業務を変える、在宅勤務を利用するといった方法があります。制度の有無や条件は会社によって異なります。

一方で、働き方を調整しても体調を保てない場合や、治療に専念する必要がある場合は、無理に働き続ける必要はありません。

大切なのは、「辞めるかどうか」だけでなく、「いつ、どのような手続きをして辞めるか」を確認することです。

主治医には、今後どの程度の療養期間が必要か、すぐに再就職活動ができる状態かを聞いておきましょう。


退職届を出す前に確認したいお金と手続き

最初に確認したいのは、健康保険の傷病手当金です。

傷病手当金を受給している人は、一定の条件を満たせば、退職後も残りの支給期間について継続して受け取れる場合があります。

協会けんぽでは、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職時に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることを主な条件として案内しています。

また、退職日に出勤すると、退職後の継続給付を受けられないとされています。[1]

有給休暇や公休日の扱いも含め、退職日を決める前に加入している健康保険へ確認しましょう。

会社には、有給休暇の残日数、休職できる期間、退職金の有無、退職後に受け取る書類について確認します。

離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証、健康保険の資格喪失を確認できる書類など、必要となる書類は人によって異なります。

いつ、どのような方法で受け取れるかを人事・労務担当者に聞いておくと安心です。


退職後の健康保険と年金を確認する

退職すると、勤務先の健康保険の資格を失うため、新しい健康保険への加入手続きが必要です。

主な選択肢は、勤務先の健康保険を任意継続する、国民健康保険に加入する、家族の健康保険の扶養に入る、の三つです。[2]

保険料は家族構成や前年の所得などによって変わります。

任意継続と国民健康保険の金額をそれぞれ確認し、家族の扶養に入れる可能性も含めて比較しましょう。

協会けんぽの任意継続は、退職日の翌日から20日以内の申請が必要です。[3]

期限が短いため、退職前から必要書類と保険料を確認しておくことが重要です。

健康保険組合に加入している人は、その組合に手続きや期限を確認してください。

20歳以上60歳未満の人が退職し、すぐに厚生年金へ加入しない場合は、原則として国民年金への切り替えが必要です。

配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先を通じて手続きします。

保険料の支払いが難しいときは、免除や納付猶予を利用できる場合があります。

日本年金機構は、失業の事実を確認できる場合、本人の前年所得にかかわらず審査を受けられる特例を案内しています。[4]


すぐに働けないときは失業給付の受給期間延長を確認する

雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付は、働く意思と能力があり、仕事を探している人を支える制度です。

そのため、病気ですぐに働けない状態では、通常の求職申込みを急ぐのではなく、「受給期間の延長」を確認します。

退職時に65歳未満で、病気やけがなどにより30日以上働けない状態が続く場合は、基本手当を受けられる期間を延長できることがあります。

これは給付日数を増やす制度ではなく、受給する時期を先に延ばす手続きです。

厚生労働省の案内では、本来1年の受給期間に、働けない期間を最長3年間加えられるとされています。[5]

申請が遅いと所定給付日数のすべてを受け取れない可能性があるため、離職票を受け取ったら、住所地を管轄するハローワークへ早めに相談しましょう。


生活を支える制度も確認する

病気によって日常生活や仕事が大きく制限される場合は、障害年金の対象となる可能性があります。

障害年金は、難病という病名だけで決まるものではありません。初診日、保険料の納付状況、障害の程度などの要件があります。

日本年金機構は、内部疾患を含む病気やけがにより生活や仕事が制限される場合、現役世代でも請求できると案内しています。[6]

早めに年金事務所へ相談し、初診日を確認できる資料や診療記録を整理しておきましょう。

指定難病の医療費助成については、退職したかどうかではなく、対象疾病や重症度などの要件で判断されます。

対象になる可能性がある人は、お住まいの都道府県や指定都市の窓口、保健所などへ相談してください。[7]


体調が整ったら利用できる就労支援

再び働きたいと思ったときは、一人で求人を探すだけでなく、難病患者向けの就労支援を利用できます。

難病患者就職サポーターは、症状の特性を踏まえた職業相談や就職支援を行っています。

地域障害者職業センターでは、職業評価、働くための準備、職場への適応支援などを受けられる場合があります。[8]

相談するときは、「週に何日なら働けるか」「通勤は何分までか」「避けたい作業は何か」「通院日の確保が必要か」を整理しておくと、自分に合う仕事を探しやすくなります。

退職後は、まず治療と生活を整えることを優先し、体調が戻ってから次の働き方を考えても遅くありません。


よくある質問

Q. 傷病手当金と失業給付は、同じ時期に受け取れますか。

傷病手当金は「病気やけがで仕事に就けない状態」を支える制度で、失業給付の基本手当は「働く意思と能力があり、求職活動をしている状態」が前提です。

状態によって手続きが異なるため、自己判断で申請せず、加入している健康保険とハローワークの双方へ確認してください。


Q. 退職後の健康保険は、どれを選べばよいですか。

任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の扶養では、保険料や加入条件が異なります。

任意継続には申請期限があり、国民健康保険の保険料は自治体ごとに計算方法が異なります。退職前にそれぞれの窓口へ問い合わせ、金額と条件を比較しましょう。


Q. 障害者手帳がなくても、難病患者就職サポーターへ相談できますか。

難病患者就職サポーターは、難病のある人の就職や雇用継続を支援する窓口です。

利用方法や対象については、最寄りのハローワークの専門援助窓口へ確認してください。まだ働けない状態であれば、まず治療を優先し、雇用保険の受給期間延長や生活を支える制度について相談しましょう。


参考情報

以下はすべて公的機関の情報です。制度は変更される場合があるため、公開時にも最新情報をご確認ください。(2026年7月30日確認)

[1] 全国健康保険協会「傷病手当金に関するQ&A(退職後の継続給付)」

[2] 全国健康保険協会「退職後の健康保険について」

[3] 全国健康保険協会「任意継続」

[4] 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」

[5] 厚生労働省・兵庫労働局「受給期間の延長申請について」

[6] 日本年金機構「障害年金の対象となる病気やけが」

     日本年金機構「障害基礎年金の受給要件」

     日本年金機構「障害厚生年金の受給要件」

[7] 厚生労働省「指定難病」

[8] 厚生労働省「難病患者の就労支援」


※本記事は一般的な情報の提供を目的としています。
制度の利用条件は、雇用形態、勤務先の規定、加入する健康保険、年齢、病状などによって異なります。
個別の手続きは、勤務先、加入する健康保険、ハローワーク、年金事務所、自治体等へご確認ください。