患者・家族と考える「移行期医療」と生活の準備|小児科からの転院と医療費助成
2026/7/28 公開
国立成育医療研究センターでは、移行期医療の支援を行うトランジション外来があります。
その外来でソーシャルワーカーは自立して受診行動をとることが難しい患者さんとその家族を中心に支援をしています。
支援をする際には、成人医療機関への移行だけに焦点を当てるのではなく、
患者自身の今後の社会生活、社会保障、社会活動、家族との関係、移行先の希望などについて伺いながら、できる限りの配慮を心掛けながら、
支援することが大切であると考えています。
自立した受診行動がとれない患者さんは、家族の考え方や生活様式が医療機関の受診行動にも影響もうけやすいため、
その方が継続して適切な医療を受けられるよう、環境や生活にも配慮して支援していかなければならないと考えます。
今回のテーマは、患者・家族が一緒に考える移行期医療と生活の準備という内容であるため、
生活面、関係機関との連携、移行期医療に関連する制度利用のこと、関わる人のそれぞれの役割、患者・家族の意思決定支援などの面から
移行期医療について考えてみたいと思います
まず、移行期医療と社会生活について考えてみたいと思います。
移行期医療のお話が出るタイミングは、就労等、人生の新たな出発の時期と重なるころになる方もいるかと思います。
そのため、移行期医療を進めることは、患者とその家族の生活にも影響を与えることが想定されます。
小児科から成人の医療機関に移行する際、必ずしも患者とその家族が望む医療機関への移行が叶うことばかりではありません。
医療機関にかかっていた疾患や病状、状態によっては、対応できる成人医療機関が限られることもあり、今までは自宅近くの医療機関に通えていたのが、遠くの医療機関に通うことになる事も想定されます。
医療機関の数は当然ではありますが限られており、あらゆる疾患がどの医療機関でも診察可能というわけではないことを知っておくことは必要であると考えます。
今までとは違い、遠方の医療機関に通わなければならないこともあるかもしれませんし、今までは総合病院に通っていたが、開業医の先生の所に普段はかかりつけとして通うことになる事も検討する必要があります。
何でも相談できた小児医療と縦割りな成人医療の体制の違いについても、理解する必要があります。
移行先の希望を検討するうえで、希望を出すことはとても大切なことですが、社会資源の限界があることも理解する必要があります。
いずれにしても、医療だけでなく、患者さんの生活にも合うような医療機関の選定を検討する必要があると考えます。
次に関係機関との連携においてポイントとなる事について考えてみたいと思います。
小児科の先生は様々な側面から患者を診てくれたり、相談にのってくださることが多いかと思いますが、成人科の先生方は診療科ごとが縦割りになっていて、対応も小児科の先生よりはドライなところもあるかもしれず、戸惑う患者さんも多いかもしれません。
また、子どものころは複数の診療科にかかる必要があっても、一つの医療機関にかかれば良かったのが、成人の医療機関にかかることになると、複数の別の医療機関にかからなければならないこともあります。
また、子どもの医療機関にかかっていた時は、かかりつけの子どもの病院の救急外来に受診し、そのまま入院を受け入れてくれることも通常の対応であったりもしますが、成人の医療機関の場合、いわゆるバックベッドと言われる緊急時に受け入れてくれて、入院も受け入れてくれることを確約してもらうことは難しくなります。
成人医療機関に移行する際に、緊急時のバックベッドの確保を希望する患者家族は多いですが、それは容易ではなく、そういった小児医療と成人医療の仕組みの違いを知っておくことは必要です。
このことは当面の課題になるかと思います。
▼小児科と成人科の体制の違い
| 項目 | 小児科の体制 | 成人科の体制 |
|---|---|---|
| 診療の進め方 | 様々な側面から患者を診て、相談にのってくれることが多い | 診療科ごとが縦割りになっている |
| 受診する医療機関 | 複数の診療科が必要でも、一つの医療機関で済むことが多い | 複数の別の医療機関にかからなければならないことがある |
| 緊急時の入院(バックベッド) | かかりつけの救急外来から、そのまま入院を受け入れてもらいやすい | 緊急時の受け入れや、入院の確約をもらうことは難しい |
成人年齢に達するタイミングで主治医から移行期医療の話が出てくることと思いますが、同じくらいのタイミングにいくつか利用できる制度が変わることもあるため、事前に把握し、準備しておくことも必要であると考えます。
まずは医療費助成についてです。
子どもの年齢時は、自治体ごとには異なりますが、自己負担が少額で抑えられる小児医療費助成(制度の呼び方は自治体によって異なる)や最長で20歳まで利用できる小児慢性特定疾病医療費助成制度がありますが、子どもが18歳ぐらいになると、患者さんとその家族から小児医療費助成が利用できなくなる18歳以降や小児慢性特定疾病医療費助成が利用できなくなる20歳以降に利用できる医療費助成制度が他にないかとのご相談をよくいただくことがあります。
20歳以降に、小児慢性特定疾病医療費助成制度の代わりに利用できる可能性がある医療費助成制度をご紹介します。
①難病医療費助成制度
手続きに数か月かかるため、急ぎで制度を利用したい場合は注意が必要です。
②心身障害者医療費助成制度(マル障)
身体障害者手帳を所持した一部の方や、療育手帳を所持する一部の方が利用できるなど、対象者に制限があります。
③高額療養費・限度額認定証
ひと月の医療費(自己負担額)を、所得に応じた一定の限度額までに抑えられる健康保険の制度です。
【注意点】
制度によって自己負担の上限額が異なるため、小児の時に比べて自己負担額が増える可能性があることを理解しておく必要があります。
受診する医療機関(成人科の移行先)によっては、これらの制度が利用できない場合があります。移行前に制度の利用可否を必ず確認しましょう。
障害年金などを含め、これらの制度は非常に複雑です。利用できるかどうかは事前に主治医やソーシャルワーカー等に相談することをお勧めします。
移行期医療では、患者さんを中心に、その周りで関わる方々の役割も重要になってきます。
関わる人は、家族、学校、福祉サービス関係者、医師、看護師等、様々な方がいますが、それぞれの方がそれぞれの役割を理解して、支援していくことが必要と考えます。
家族は、患者さんのキーパーソンにもなりうるわけなので、患者さんを一番よく知る存在として、患者さんにとって、ベストな移行期医療が実現できるよう伴走する必要があると考えます。
主治医の治療方針をよく理解し、生活面も含めたケアについて看護師等からのアドバイスを理解し、学校の先生や福祉関係者との連携も重要になってくるかと思います。
家族の思いが前に出ることが当然ですが、何よりも、患者さん本人を中心に考えて、何が一番良い選択なのかを常に心がけることが必要だと考えます。
最後に患者と家族の意思決定支援についても触れておきたいと思います。
支援者側として大切にしていることとしては、患者や家族のペースをできる限り尊重することです。
患者本人だけでなく、家族の置かれた状況にも配慮し、決して移行することを急かすようなことはしないように心がけています。
ただし、成人医療機関への移行が患者本人にとって必要なことであることを理解していただけるよう、主治医を含めて患者・家族に伝えていく努力は必要なのだと考えます。
家族によっては、今まで診てくれていた医師に今後もずっと診続けてほしいとのご希望を訴える方もいらっしゃいますが、成人期を迎える患者にとって、より適した医療が受けられる支援ができることを支援者側は心掛けていることを伝えていかなければならないとも考えます。
成人期に発症する疾患は成人科の先生に診てもらうのが適しているため、そのような説明も小児科の主治医からも説明はあるかと思いますが、人生の段階に合わせた大切な決断するためにも、様々な関係者の意見を聞くことも必要なのかもしれません。
移行期医療については、人生の大きな決断の一つになるかと思います。
すぐに決断される方、一歩を踏み出すのに時間を要する方等、様々な方と関わらせてきました。
皆さんに共通しているのは、患者さんのことを本当によく考えておられることだと思います。
新しい医療機関に移行することは、人生においてとても大きなイベントですが、支援する側の者は、家族に可能な限り寄り添い、一歩前に進むお手伝いをすることぐらいかもしれません。
社会の中で、移行期医療についての課題を少しでも多くの方に理解してもらえるよう、引き続き支援者として、活動していきたいと考えます。

内藤 訓生 様
国立成育医療研究センター
ソーシャルワーカー
外来、入院など様々な診療科の患者さんとそのご家族に関わってまいりました。
移行期医療支援に関わり始めて3年ほどが経ちました。
移行期移行は、患者さんやご家族にとって、大きな転換期になると感じています。
できる限り、寄り添った支援ができるよう努めてまいります。