刀根実幸(とね まみ)さんの素敵なお話を前後半に分けて、お届けします。
【目次】
7.🔏子育ては「みんなで考える」
8.🔏外出も、工夫しながら楽しむ
9.“🔏好き”を取り戻していく
12.おわりに
※「🔏」の箇所を、会員限定となっております。
お写真は、刀根さんご家族の許可を頂いて掲載しております。
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出産後、人工呼吸器管理となった実幸さん。
それまで普通に話せていたものの、気管切開後は声が出せなくなり、約2年間“口パク”でコミュニケーションを取っていました。
幼い娘さんにとって、
「ママはしゃべれない。」
と、思っていた時期もありました。
その後、訪問看護師や医師たちが何種類ものスピーチカニューレを試してくれたことで、再び声を出せるように。
娘さんが3歳頃、
「ママしゃべれるじゃん!」
と驚いたことは、今でも忘れられない出来事だったと、旦那さまは話してくださいました。

実幸さんは、高校時代からイラスト制作を続けています。
その活動は、今年で23年目になるそうです。
もともとは、パソコンを使って絵を描き、カレンダーにして販売する活動をしていました。干支の動物や季節の風景、家族との思い出などをモチーフにした作品は、あたたかく、やさしい雰囲気に包まれています。
お子さんが生まれてからは、親子をテーマにしたイラストも増えました。干支の動物も、以前は1匹で描くことが多かったそうですが、今では親子3人のような構図になることもあるといいます。
作品には、実幸さんの日常が映し出されています。



お子さんが菜の花を摘んできてくれたこと。
一緒にイベントへ出かけたこと。
鯉のぼりの中をくぐる体験をしたこと。
手をつないで歩いてくれたこと。
そうした一つひとつの思い出が、イラストの中でやさしく表現されています。絵を描く時は、ボールのついた「トラックボールマウス」を使って、パソコンで自分の思う線や形を描いています。絵に添える詩は、手書きにこだわっているそうです。
現在は、腕を大きく動かすことが難しいため、ご家族に手元を支えてもらいながら、自分の字を書いてらっしゃいます。
旦那さまは笑いながら、
「書き順が違うと怒るんです」
と話してくださいました。
その言葉からは、実幸さんの作品へのこだわりが伝わってきます。
自分の思うように書きたい。自分の表現として形にしたい。そこには、長年創作を続けてきた実幸さんの誇りがあります。
イラストは、単なる趣味ではありません。
実幸さんにとって、自分を表現する手段であり、人とつながるきっかけであり、人生の大切な一部です。
まみさんの生い立ちから、素敵なイラスト、歌、詩が拝見できます。
ぜひご覧になってください。


インタビューの最後に、お母さまは、同じ病気と向き合う方やご家族に向けて、こんな言葉を話してくださいました。
「できないから諦めるんじゃなくて、どうしたらできるかを考えてほしい」
その言葉は、実幸さんご家族のこれまでの歩みそのもののように感じました。
病気があることで、確かに難しいことはあります。
体力の問題、呼吸器の管理、移動の準備、医療的ケア。
何かをするたびに、考えなければならないことはたくさんあります。
けれど、実幸さんご家族はいつも、「できない理由」だけを見てきたわけではありませんでした。
地域の保育園に通うにはどうしたらいいか。
普通校で友だちと一緒に学ぶにはどうしたらいいか。
人工呼吸器をつけながら子育てに関わるにはどうしたらいいか。
外出を楽しむには、どんな準備が必要か。
声を出すには、どんな方法があるか。
その時々で、本人と家族、医療者、地域の人たちが一緒に考えてきました。
実幸さん自身にも、これからやってみたいことがたくさんあります。
馬に乗ってみたい。
旦那さまのふるさとへ行きたい。
もっといろいろな場所へ出かけたい。

人工呼吸器があるから無理。
車いすだから難しい。
そう決めつけるのではなく、まずは「やってみたい」という気持ちを大切にする。そして、どうしたら実現できるのかを考えてみる。
その姿勢が、実幸さんの暮らしを広げてきました。
お母さまは、
「できることではなく、やりたいことをさせてあげられる環境を作ってほしい」
とも話してくださいました。
本人の「やりたい」という気持ちを、周りがどう受け止めるか。
その気持ちを大切にできるかどうかで、暮らしの可能性は大きく変わるのかもしれません。
インタビューを通して強く感じたのは、実幸さんご自身の強さとアクティブさでした。
先天性筋ジストロフィー福山型とともに生きながら、出産に向き合い、子育てを重ね、外出や創作活動も楽しむ。人工呼吸器や胃ろうなど、生活の中にはたくさんの工夫が必要ですが、実幸さんの言葉やエピソードからは、「やりたい」という気持ちを大切にしながら暮らしている姿が伝わってきました。
そして、そのそばには、明るく支える旦那さまとお母さまの存在があります。
大変だった出来事も、ご家族は時に笑いを交えながら話してくださいました。その明るさは、つらさをなかったことにするものではなく、これまで一つひとつの出来事を乗り越え、工夫しながら暮らしてきたからこその明るさなのだと感じました。
「できない」と決めつけるのではなく、どうしたらできるかを考える。
実幸さんご家族のお話には、その姿勢が何度も表れていました。
この記事が、同じ病気と向き合う方やご家族にとって、暮らしを考えるきっかけや、少し先を照らすヒントになれば幸いです。


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