ライソゾーム病と仕事の両立はどうする?働き方の工夫や活用できる制度をわかりやすく解説

2026/08/25公開

ライソゾーム病と診断され、「今の仕事を続けられるか」「定期的な通院と仕事の両立はできるか」と不安を抱えている方がいるかもしれません。


ファブリー病やポンペ病などを含むライソゾーム病は、定期的な点滴治療が必要になったり、疲れやすいといった症状があったりするため、働き方に工夫が必要な疾患です。

 

 この記事では、ライソゾーム病の方が無理なく働き続けるための対策や、職場への合理的配慮の伝え方、公的な制度について解説します。ご自身の働き方を見つけるための参考にしてみてください。

目次

ライソゾーム病と仕事の悩みとは?働き方に影響する治療や症状

ライソゾーム病の「ライソゾーム」とは、細胞のなかの小さな器官のひとつのことで、体のなかのいらなくなったもの(老廃物)を分解する働きを持っています。ライソゾーム病の原因は、ライソゾーム内の酵素に関係する遺伝子の変化により、老廃物を分解する酵素が欠けたり、うまく働かなくなったりしていることにあります。ライソゾーム病とは、遺伝的に老廃物をうまく分解できなくなり、体に負担がかかる病気のことです。 


ライソゾーム内の酵素にはたくさんの種類があり、それぞれ違う物質を分解しています。酵素がひとつでも不足したり働かなくなったりすると、分解されない老廃物が細胞のなかに溜まり、組織や臓器に異常があらわれ病気になるのです。ライソゾーム病にはゴーシェ病、ムコ多糖症など60もの種類があります。同じライソゾーム病でも、種類によって症状は異なります。


ライソゾーム病は、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)において指定されている指定難病です。


▼参考文献:

国立成育医療研究センター|ライソゾーム病センターについて

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)ライソゾーム病、ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを含む)における早期診断・早期治療を可能とする診療提供体制の確立に関する研究|ライソゾーム病とは?(Q & A)患者様向け

難病情報センター|トップページ


ライソゾーム病の治療をしながら、働くときには、治療や症状の特徴から、以下のような特有の困りごとがあります。


  • 定期的な通院治療が必要:足りない酵素を点滴などで補う酵素補充療法のために、毎週あるいは隔週で通院し、1~4時間の点滴を継続する。
  • 身体が思うように動かせない・疲れやすい:長時間の作業や移動が負担になることがある。
  • 視力障害や難聴によりコミュニケーションに支障が出る。
  • 痛みや、心臓・腎臓にあらわれる症状は外見からはわかりにくく、周囲に伝わりにくいことがある。(手足に強い痛みがあるライソゾーム病としては、ファブリー病があげられます。)


治療内容や通院の頻度は、病気の種類や重症度、状態により異なります。また、進行性の病気のため、症状の変化によって困りごとも変化するという特徴があります。


ライソゾーム病の症状に合わせた働き方の工夫と対策

ここでは、ライソゾーム病に特有の困りごと別の働き方の工夫と対策をご紹介します。

定期的な通院治療が必要

出勤・退勤の時間を自分で調整できるフレックスタイム、半休・時間単位の有給休暇の活用などがあります。また、主治医や通院している医療機関に、治療日時の調整が可能か相談してみましょう。自分の職場の就業規則を見直したり、人事担当者に聞いてみたりするのも大切です。

身体が思うように動かせない・疲れやすい

疲れやすさ・筋力低下への対策としては、在宅勤務や時差出勤を活用する方法があります。ラッシュ時間を避けることで、座って通勤できる可能性が高まります。また、周りに歩行スピードを合わせずにすみます。


体力の消耗を抑えるために、重い荷物を運ぶのは他の人にお願いしたり、カートに切り替えたりといった工夫も必要です。業務は優先順位を整理して、体調がよい時間帯に大切な作業を終わらせるといったスケジュール管理も取り入れてみましょう。

視力障害や難聴が進行しコミュニケーションに支障が出る。

眼鏡や補聴器を使うとともに、職場環境の調整も大切です。視力低下がある場合は、パソコンのモニターを大きいものに変えるほか、資料の文字を大きく印刷する方法があります。難聴がある場合は、会議では聞き取りやすい席にしてもらう、口頭での指示だけでなく、チャットやメールなど文字でも残してもらうといった具体的なルールを周囲と共有してみましょう。

痛みや内臓への影響で、見えにくい症状がある

自分のペースでこまめに休憩を取ったり、タスクの管理方法を工夫したりしてみましょう。痛みなどの症状が仕事に影響する場合は、症状が出たときの対処法や薬の使い方について、あらかじめ主治医に相談しておくのも大切です。薬を職場に持参・保管する場合は、薬剤ごとの保管方法を確認しておきましょう。

職場で理解を得るための合理的配慮の具体例と伝え方

2013年(平成25年)4月より、ライソゾーム病を含む難病などが障害者総合支援法の対象となりました。

また、2016年4月より、改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供が義務になりました。合理的配慮とは、障害のある人が生活するうえで支障になる困りごとなどを取り除くためにする個別の調整や変更のことです。そのため、雇用側に大きな負担がなければ、働くに当たっての支障を解消する必要があります。


ライソゾーム病の場合に考えられる合理的配慮の具体例には、以下のものがあります。

例1. 「2週間に1回、点滴治療のための通院が必要なので、その日は半休を取りたい」

例2. 「疲れやすいため、立ちっぱなしの作業は避け、こまめに座って休憩をとらせてほしい」 

例3. 「重いものを運ぶ作業は他の人にお願いしたい」

例4. 「手足に強い痛みが出たときは、少しの間だけ席を外して休ませてほしい」


会社側へ合理的配慮を申し出るときには、できないことだけでなく、「こういう配慮があれば業務ができる」と伝えましょう。

ライソゾーム病は外見からは分かりにくい症状もあります。見えにくい辛さに対する配慮も遠慮なく相談しましょう。事前に伝えることをまとめてメモにするのがおすすめです。手元にメモがあると、落ち着いて要望を伝えられます。

また、自分からうまく伝えられるか不安なときには、次回診察時に「会社に配慮をお願いしたいので、就業に関する意見書(診断書)を書いてもらえないか」と主治医に相談してみる方法もあります。


治療と仕事を両立するための公的な制度

ここでは、ライソゾーム病の治療と仕事を両立するための公的な制度について、説明します。

指定難病患者への医療費助成制度

指定難病には、疾病ごとに診断基準と特性に応じた重症度分類が設定されています。重症度分類に照らして病状の程度が一定以上だと、医療費助成を受けられます。もし、重症度分類を満たさなくても、高額な医療の継続が必要な場合(申請月以前の12カ月以内に医療費総額が33,330円を超える月が3回以上ある)は同様です。


指定難病医療費助成制度とは?|申請・更新・自己負担上限額を解説(かんしん広場)

傷病手当金

傷病手当金は、病気休業中に働く人と家族の生活を保障するために設けられた、公的医療保険(健康保険)による制度です。病気やケガのために会社を休み、十分な報酬が受けられない場合に支給されます。


業務外の理由による病気やケガの休業である場合が対象のため、ライソゾーム病で休む場合も要件を満たせば支給されます。公的医療保険による制度なので、職場の人事担当者などに相談しましょう。


傷病手当金とは?|支給条件・金額・期間・申請方法をわかりやすく解説(かんしん広場)

障害者手帳

障害の程度によって、身体障害者手帳を取得できる可能性があります。手帳があると障害者枠での就労など選択肢が広がります。

身体障害者手帳の申請には、都道府県知事、指定都市市長または中核市市長が指定する医師の診断書・意見書、障害のある方の写真が必要です。手続方法などについては、お住まいの市町村の担当窓口にお問い合わせください。


難病患者のための障害者手帳制度について(かんしん広場)

障害年金

障害年金は、病気によって生活や仕事に制限を受けるようになった場合、現役世代でも請求できます。ライソゾーム病による筋力低下や内臓の症状で就労に支障をきたす場合には、障害年金を受け取れる可能性があります。障害年金は、生活を支える制度のひとつです。受給には、障害の状態のほか、初診日や保険料の納付状況など一定の要件があります。


検討したい場合も含め、自分が手帳や年金の対象になりそうか、主治医や病院で生活の相談にのってくれる専門家(医療ソーシャルワーカー)に相談してみましょう。


障害年金(かんしん広場)

安心して働くための相談窓口と支援

まず、働くときには悩みごとや困りごとを一人で抱え込まないようにしましょう。安心して働くために、相談できる窓口がたくさん用意されています。

また、相談すべきタイミングの目安もあります。以下のような場合、相談を検討してみましょう。


  • 仕事を辞めたい、限界かもと悩むとき
  • 治療が始まり、通院回数が増えそうなとき。両立が不安なとき
  • 休職からの復職や、異動を考え始めたとき

身近な相談先には、主治医や会社があります。まずは今の症状でどのような働き方ができるか主治医に相談したり、使える制度がないか会社の上司や人事担当者に確認したりすることから始めてみましょう。


さらに、公的な支援機関も頼りになります。就職に向けての課題や自分に合った仕事を知りたい場合には「地域障害者職業センター」、具体的な就職活動なら「ハローワーク」など大まかな役割はあります。しかし、どこへ相談しても、連携して解決してもらえる場合が多くなっています。どこへ相談したらよいか分からない場合は、まず以下の窓口を活用してみてください。


難病相談支援センター:ハローワーク、障害者職業センター、就業・生活支援センターなどと連携して就労・相談支援を実施してくれます。

難病患者就職サポーターによる支援:ハローワークの障害者の専門援助窓口では専門スタッフが、仕事探しをサポートしてくれます。

障害者就業・生活支援センター:身近な地域で就業面や生活面で一体的な支援をしてもらえます。


「いきなり窓口へ行くのはハードルが高い」と感じる場合は、「就労について相談したいのですが、お話を聴いてもらえますか?」と、問い合わせの電話をかけてみることから始めてみましょう。


また、就職・転職を考えるなら障害者雇用も選択肢になります。障害者雇用促進法で、企業に対して2.7%に相当する障害者を雇用することが義務付けられています。報酬は、勤務形態や職種、サポート体制の違いによってさまざまです。


▼参考文献:

厚生労働省|障害者雇用対策

まとめ

ライソゾーム病と仕事の両立について、働き方の工夫や活用できる制度を解説しました。


ライソゾーム病は、難病法において指定されている指定難病です。生まれつきで進行性の疾患のため、次第に仕事や生活に支障が出てくる場合もありますが、工夫や周囲のサポート、公的な支援制度を活用することで、治療と仕事を両立して働き続けるための選択肢を広げられることがあります。


働き方に悩んでも、決して一人で抱え込まないようにしましょう。まずは主治医や会社、ハローワークや難病相談支援センターなどの窓口に相談してみてください。ご自身の体調を第一に考え、無理のないペースで働き方を見つけていくのが大切です。