「今なら何かお手伝いできるかもしれない」
復職と患者会との出会いから見えた、白野宏樹さんの重症筋無力症との向き合い方
白野宏樹さんの素敵なお話を前中後編に分けて、お届けします。
【目次】
5.🔏休職から復職へ──会社に病気をどう伝えたか
6.「今なら何かお手伝いできるかもしれない」──患者会との出会い
7.「人に優しくなりました」──病気を経験して変わった考え方
8.「悲観的にならなくても大丈夫」──患者さん・ご家族へ伝えたいこと
※「🔏」の箇所を、会員限定となっております。
お写真は、白野宏樹さんの許可を頂いて掲載しております。

※会員登録をいただくと、白野宏樹さんのインタビュー記事の続きを素敵なお写真と共に読むことができます。
プロフィール設定の”関心のあるもの”より「インタビュー」をご選択ください。
重症筋無力症を発症し、入院やクリーゼ、休職を経験した白野宏樹さん。後編では、体調に合わせながら仕事へ復帰した経緯や、職場へ病気をどのように伝えてきたのかを伺います。
❁
さらに、患者会との出会いや、病気を経験したことで変わった自身の考え方についてもお話しいただきました。「今なら何かお手伝いできるかもしれない」という思いで患者会に関わるようになった白野さんが、今、重症筋無力症の患者さんやご家族へ伝えたいこととは――。

重症筋無力症と診断された白野さんが最初に知りたかったことの一つが、
「この病気の人は、今どういう生活をしているのか」
ということでした。
治療法については、インターネットで調べればさまざまな情報が出てきます。
しかし、実際に病気を抱えた人がどのように働き、どのように生活しているのかは、それだけではなかなか見えてきません。
兵庫県へ戻り、自宅療養をしていた時期、白野さんは重症筋無力症を含む免疫疾患についての講演会が開かれることを知りました。
「この病気の講演会なら行ってみよう」
と思い、参加します。
そこには、同じ重症筋無力症の患者さんもいました。
そして会場で、患者会の方から声をかけてもらいました。
「患者会に入る?」
と勧めてもらったものの、その場ですぐに入会することはしませんでした。
当時は、まだ体調が安定していなかったからです。
「また講演会とかあったら来ます、ぐらいだったんです。」
患者会に入ること自体が嫌だったわけではありません。
白野さんの中では、患者会に対してあるイメージがありました。
「患者会って、催し事の主催者というイメージがありました。」
イベントを企画したり、運営したり、誰かのために活動したりする。
そう考えると、体調が不安定で自宅療養を続けている自分が入っても、何もできないのではないかと思いました。
「入会したところで、そういう集まりに参加できなかったら、あまり意味が無いなと思って。」
「体調が悪くて、ずっと自宅だと何もお手伝いできないので。」
そのため、すぐに入会するのではなく、講演会へ足を運んだり、同じ病気の人と話したりするところから始めました。
今振り返ると、
「単純に、お話を聞けるだけでも良かったかなと思います。」
と話します。
その後、治療によって体調が安定していきました。
仕事にも戻り、横浜の本社へ転勤することになります。
主治医とは、転勤による環境の変化が体調へ影響しないかについても話していました。
「横浜へ行って安定すればいいけど、転勤とかがストレスになってまた悪くなったらいけないので、様子を見ながらだね、という話はしていました。」
横浜での生活も続き、体調が安定してきた頃、MGに関するイベントへ参加しました。
そこで首都圏の患者会の方と話す機会がありました。
「実は今まで兵庫でもこういうところに行っていたんですけど、今は横浜にいて、体調も安定してきたので、友の会に入会したいです」
と、自分から伝えました。
そして、患者会への入会が決まりました。
白野さんが患者会に入会を決めた背景には、「今ならお手伝いできることがあるかもしれない」という思いがありました。
「今だったら、この間のフォーラムもそうですけど、お手伝いできることがあるかなと思って。」
体調が安定した今、白野さんは、自分にできる範囲で患者会の活動に関わっていきたいと考えています。

重症筋無力症を発症する前と現在。
自分自身の考え方は変わりましたか。
そう尋ねた時、白野さんは迷うことなく答えました。
「それは変わりました。」
そして、その変化を一言で表すと、
「人に優しくなりました。」
と話します。
特に大きな転機になったのは、クリーゼでした。
集中治療室へ入り、自分では呼吸もできず、思うように体へ力を入れることもできない。
病気になる前には想像すらしていなかった状況を経験しました。
「まさか自分がそんな病気になると思ってなかったっていうのもあります。」
そこから、病気や障害のある人を見る自分自身の目も変わったといいます。
「昔の自分って、人に冷たかったのかなって思います。」
以前は、病気の人がいても、
「まあ、自分にはあまり関係ないし」
と思っていた部分がありました。
しかし今は、自分自身が病気を抱えて暮らしています。
「今はそんなこと言えないんですよね。もう自分がそうなんで。」
病気を経験したことで、それまで「自分とは関係のないもの」に見えていたことが、急に自分自身の問題になりました。
その一つが、健康保険の仕組みです。
病気になる前から会社員として健康保険料を支払っていた白野さん。入院や長期にわたる治療、休職を経験し、今度は自分が健康保険の仕組みに助けられる立場になりました。
「今まで会社の保険組合に保険料をずっと払い続けていたんですけど、今は逆に助けてもらっているので。」
その経験から、社内で健康保険料について話題になったときには、こんな話をすることもあるそうです。
「今、保険料高くなって払ってるけど、それに助けられている人もいるし、いつ自分がなるか分からへんよって。」
自分自身がまさに、「いつ病気になるか分からない」ということを経験したからこその言葉です。
そして白野さんは、自身の経験を通して、重症筋無力症という病気そのものが、社会の中でもっと知られてほしいと感じるようになりました。
「重症筋無力症っていう病気がどんな病気かっていうのを、多分まだ知らない人がいっぱいいると思うんです。」
病名を知らない。
症状を知らない。
そうすると、目の前に患者さんがいても、その人がなぜ疲れているのか、なぜまぶたが下がっているのか、分からないことがあります。
重症筋無力症は、症状の出方も患者さんによって異なります。
「症状も人によってバラバラなので。」
だからこそ、一つの症状だけを見て病気を理解することは難しい。
それでも、
「こういう病気もあるんだ」
と知っている人が少しずつ増えるだけでも違うのではないかと考えています。
「身近にそういう人がいた時に、『あの病気ね』っていうのが増えればいいかなと思います。」
重症筋無力症と診断されたばかりの頃、白野さんは「この先どうなるんだろう」という不安を感じていました。
それまで自分が難病になるとは考えたこともなく、病名を聞いても、どのような病気なのか、どんな治療を受けることになるのかも分かりませんでした。
診断された当初は、治療法について自分で調べる中で、不安が大きくなることもありました。
一方で、病気について少しずつ知っていくことで、自分の症状や治療についての受け止め方も変わっていったといいます。
「こういう症状があるんだっていうのが分かれば、それと向き合うことが出来ると思います。」
何が起きているのか分からない状態では、症状が現れるたびに不安になることもあります。
しかし、重症筋無力症について知り、自分の体に起こっていることが少しずつ分かるようになることで、必要以上に怖がらなくてもよいと思えるようになりました。
「覚悟ができる、という言い方がいいかは分からないですけど、病気のことを知っていれば、そんなに恐れなくてもいいんだなっていうのは、今になって思います。」
そして、これから重症筋無力症と診断される患者さんや、そのご家族へ伝えたいのが、「悲観的になりすぎなくても大丈夫」ということです。
「発病直後は少しショックを受けるかもしれませんが、今はいろんな薬が出てきています。」
白野さん自身、診断されたばかりの頃には、治療について調べるたびに怖くなることもありました。
それでも、実際にさまざまな治療を経験し、現在は新しい治療の選択肢が増えていることにも期待しています。
「昔ほど、そんなに悲観しなくていい病気になってきたのかなっていうのは感じています。」
もちろん、重症筋無力症は一人ひとり症状や治療の経過が異なります。
それでも白野さんは、今後さらに治療の選択肢が広がり、病気があっても日常生活を送りやすくなる人が増えてほしいと願っています。
「この病気になっても、薬さえあれば日常生活を送れるよってなれば、一番いいなと思います。」
白野さん自身も、入院や手術、症状の悪化、クリーゼなどを経験してきました。
さまざまな治療を経験してきたからこそ、診断されたばかりの頃に感じていた不安と、現在の気持ちには変化があります。
「悲観的にならなくても大丈夫ですよ、というのは伝えたいです。」
そして、自分自身の経験についても、これから重症筋無力症と向き合う人に少しでも役立てばと考えています。
「自分の体験が、今後発病する人の何かの参考になれば、それはすごく嬉しいなと思います。」

※会員登録をいただくと、加藤さくらさんのインタビュー記事の続きを素敵なお写真と共に読むことができます。
プロフィール設定の”関心のあるもの”より「インタビュー」をご選択ください。
※重症筋無力症についての情報がご覧いただけます。
患者さんご家族の体験談や医師のインタビュー、患者会の紹介を掲載予定しています。