NPO法人D-SHiPS32 上原 大祐さん インタビュー(後編)

「できない」を変えるのは、人ではなく環境かもしれない


ここまでのお話から見えてきたのは、上原さんがこれまでの人生の中で、

何度も「できない」と思われていたことに挑戦し、

「どうすればできるのか」を考え続けてきた姿でした。


その原点には、幼い頃から「やってみたい」という気持ちを大切にしてくれた

お母さまの存在がありました。


そして、パラアイスホッケーとの出会いや海外での経験を通して、

「障がいがあるからできない」のではなく、

「できる環境が用意されていないだけなのではないか」

という思いを強くしていったといいます。


だからこそ、上原さんが現在取り組んでいる活動は、

単に障がいのある人に「機会を提供する」だけではありません。


子どもたち自身がさまざまな経験を重ね、

「自分にもできる」と思えるきっかけをつくる。

そして、その経験を通して、周囲の人や地域、社会の側にも変化を生み出していく。


「自分が嫌だと思ったことを、次の世代に残したくない」。

その言葉の背景には、自分自身が感じてきた不便や悔しさを、

次の世代には経験してほしくないという強い思いがあります。


では、誰もが自然に「やってみたい」と思える社会をつくるためには、何が必要なのでしょうか。


後半では、上原さんが考える「ユニバーサルデザイン」のあり方や、

そこに当事者の声を反映させることの大切さについて、さらにお話を伺いました。

インタビュー目次

1.   「ユニバーサルデザイン」にも、当事者の声を

2. 「できない」と言う人ではなく、「できる方法」を知っている人を探す

3.    やりたいことがあるなら、まず「言いふらす」

4.   「挑戦すること」と「社会課題を解決すること」🔏

5.    次なる挑戦は、アメリカ・ルート66?🔏

6.   「あなたがやりたいことを、やっている人を探してほしい」🔏

7.   おわりに🔏


「ユニバーサルデザイン」にも、当事者の声を

上原さんの活動は、スポーツだけにとどまりません。

企業の商品開発や街づくり、行政へのアドバイスなど、

さまざまな分野で「当事者の声」を届けています。


その中で、上原さんが強く感じているのが、

「当事者不在で考えられているものが多い」という課題です。


「障がい者のことを健常者が考えて作っているものって、想像で作っているものですよね。

だから私は『ファンタジーデザイン』って呼んでいます」

上原さんが例として挙げたのが、車いすユーザーも利用できるよう設計されたタクシーです。


一見すると、誰もが使いやすい「ユニバーサルデザイン」に見えるものでも、

実際に車いすユーザーが利用してみると、乗車までに非常に時間がかかったり、

運転手側の作業が複雑だったりすることがあります。


「当事者が実際に使ってどうなのか。

そこを聞かずに作ってしまうと、本当に使いやすいものにはならないんです」


大切なのは、「障がいのある人にも使えるものをつくろう」と考えることだけではありません。

実際に使う人の声を聞き、試してもらい、その意見を取り入れながら、一緒につくっていく。

そうしたプロセスそのものが、誰もが暮らしやすい社会につながっていくのだといいます。


そこで上原さんが大切にしているのが、

「バイ・デザイン」と「ウィズ・デザイン」

という考え方です。


当事者を起点にデザインする。

あるいは、当事者と一緒にデザインする。


「日本は『ウィズアウト・デザイン』になってしまっていることがあるんです」


だからこそ、当事者の声を聞くことが、一番の近道になる。

そして、それは障がいのある人のためだけではありません。

さまざまな立場の人が関わり、意見を出し合うことで、

これまで気づかなかった不便や課題が見えてくることもあります。


「企業も自治体も、結局は人がつくっています。

だから、インクルーシブなマインドを持って企業や自治体を運営することが大切なんだと思います」


上原さんが目指しているのは、特別な人のために特別なものを用意する社会ではなく、

最初からさまざまな人がいることを前提に、一緒につくっていく社会なのかもしれません。


「できない」と言う人ではなく、「できる方法」を知っている人を探す

上原さんが、障がいや病気のある子どもたちと関わる中で、強く感じていることがあります。


それは、

「できない」と決めつけるのは、本人だけではないということです。


親御さん、医療関係者、福祉関係者など、周囲の人が「この子にはできない」と思ってしまうことがあります。

もちろん、危険を避けたり、本人を守ったりするために、できない理由を考えることが必要な場面もあります。

まだ誰も試したことがないにもかかわらず、

「難しい」「無理だろう」と最初から可能性を閉じてしまうこともある。


上原さん自身が取り組んだ「車いすでのダブルダッチ」でも、最初は、

「車いすで縄跳びなんてできない」

という声があったそうです。

しかし、実際にやってみると、できた。

そして、その挑戦は、東京2020パラリンピックの開会式で披露するまでにつながりました。


「自分だってダブルダッチをやったことがないのに、

何の知見を持って、子どもに『できない』を伝えているんだろうって思うんです」


この言葉には、「できる・できない」を判断する前に、

まずは実際にやってみることの大切さが込められています。


障がいや難病のある人は、周囲から「あなたにはこれはできない」と決めつけられる機会が多い。

だからこそ、

「ぜひ、無視してほしい」と上原さんは言います。


もちろん、すべての「できない」を無視するという意味ではありません。

大切なのは、「できない」と言われたときに、その言葉だけで自分の可能性を決めてしまわないこと。


「やったことがない人は『できないよ』と言うんです。

でも、やったことがある人は『こうすればできるよ』と方法を教えてくれる」


だから、

「やったことがある人を見つけに行く」ことが大切なのです。


自分の可能性を狭めてしまう「できない」という言葉ではなく、

「こうすればできる」という方法を知っている人に出会う。

その出会いが、新しい一歩を踏み出すきっかけになるのかもしれません。


やりたいことがあるなら、まず「言いふらす」

では、「やってみたい」と思ったことがあるけれど、周囲に同じ経験をした人がいない場合、

どうすればいいのでしょうか。


上原さんの答えは、とてもシンプルでした。

「人にひたすら伝えまくるんです」


自分がやりたいことを、できるだけたくさんの人に伝える。

まだ方法が分からなくても、実現できるかどうか分からなくても、

まずは「自分はこれがやりたい」と口にしてみる。


「ダブルダッチをやりたい」と言い続けた結果、仲間ができた。

「やりたい」という思いを誰かが知ってくれたからこそ、「一緒にやるよ」と言ってくれる人が現れたのです。


一人で考えているだけでは、なかなか見つからない方法や出会いも、

声にすることで思いがけないところからつながっていく。


上原さんにとって、「言いふらす」ことは、自分の夢を周囲に知ってもらうだけではなく、

その夢を一緒に実現してくれる仲間を見つけるための方法でもあるのかもしれません。


「パクられたらどうするんですか?ってよく言われるんですけど、パクられたら私の仕事が一つ減るんですよ。

最高じゃないですか(笑)」


自分のやりたいことを、一人で抱え込まない。

声にする。

人に伝える。

そして、仲間をつくる。


誰かに思いを伝えることで、新しい出会いやアイデアが生まれ、

自分一人では想像できなかった形で実現していくこともあります。


それもまた、挑戦を実現するための大切な一歩なのかもしれません。..................................




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