移行期医療とは?なぜ必要なの?

子どもの医療から大人の医療へ

2026/10/8 公開

移行期医療(いこうきいりょう)とは、子どものころに発症した病気がある方が、大人になったあとも必要な医療を受け続けられるようにする取り組みです。小児期医療から成人期医療へ、医療や支援をつないでいく過程を指します。

年齢を重ねると、患者さんの体や心、生活環境が変化するため、成人期に合った医療や生活上の支援が必要になることがあります。

移行期医療は、小児科から成人科へ(小児診療科から成人診療科へ)移ることだけではありません。自分の病気について知ることや、必要な支援を受けながら医療に関わることも含まれます。

この記事では、移行期医療の意味や必要性、診療を移行する方法、患者さん本人とご家族が知っておきたいことをわかりやすく説明します。

この記事でわかること

小児期から成人期の医療へつなぐ移行期医療(トランジション)の必要性と役割、具体的な移行方法や準備のポイントがわかります。


移行期医療とは?小児期から成人期の医療・支援をつなぐ取り組み

移行期医療とは?小児期から成人期の医療・支援をつなぐ取り組み

移行期医療とは、子どものころから続く病気がある方が、大人になったあとも、自分に合った医療を受け続けられるようにする取り組みです。トランジションとも呼ばれます。

対象となるのは、小児期発症慢性疾患(しょうにきはっしょうまんせいしっかん)など、子どものころから継続して医療が必要な方です。難病や希少疾患(きしょうしっかん)の患者さんが含まれることもあります。

小児医療では、ご家族と医療者が中心となって、患者さんの成長や発達を支える機会が多くあります。対して、成人医療では、患者さん本人が医師の説明を聞き、自分の体調や希望を伝えながら治療に関わることが基本です。

ただし、成人医療になったからといって、通院や治療の選択をすべて一人で行う必要はありません。難しいことは、ご家族や支援者、医療者のサポートを受けながら進められます。

また、小児診療科から成人診療科へ移ると、長く診てもらった主治医や医療機関から離れる場合があります。不安を感じる患者さんやご家族もいるでしょう。そのため、ある日突然、診療科や病院を変えるのではなく、病気の状態や本人の理解、地域の医療体制などに合わせて計画的に準備します。

小児医療と成人医療には、次のような違いがあります。


比較する項目
小児医療(子どもの医療)
成人医療(大人の医療)
めざすこと
心と体のすこやかな成長と発達を支える
年齢に合った健康管理と社会生活の両立を支える
医師の説明
おもに保護者へ説明する
おもに患者さん本人へ説明する
治療について決める人
本人の年齢や理解度に応じて、保護者が本人に代わって同意・決定することが多い
患者さん本人の意思を基本とし、必要に応じてご家族や支援者がサポートする
病状の伝え方
本人の年齢や理解度に応じて、保護者が本人に代わって医師へ伝えることが多い
患者さん本人が自分の言葉で体調や症状を伝える
受診のしかた
本人の年齢や状況に応じて、保護者が付き添って受診することが多い
患者さん本人が中心となって、受診し、必要に応じてご家族や支援者が付き添う
医療機関の連携
一つの医療機関のなかで診療や支援を受けることが多い
病院と地域の診療所などが役割を分担することが多い
支援の体制
同じ医療機関にいる、さまざまな専門職と連携しやすい
複数の診療科や、地域の社会資源の支援者との連携が必要になる場合がある


なぜ移行期医療が必要なの?年齢とともに医療や生活上の課題が変わるため

医療の進歩により、子どものころに発症した病気の治療を続けながら、大人になる方が増えています。

しかし、成長にともなって体や心が変化するため、子どものころとは異なる健康管理が必要になります。進学や就職などによって生活環境が変わるほか、利用できる医療費助成や福祉制度が変わることもあります。

十分な準備がないまま、子どもの医療から大人の医療へ急に切り替えると、必要な診療や支援が途切れてしまうかもしれません。そのため、患者さんの成長や病気の状態、生活環境に合わせて、医療や支援を計画的につないでいく移行期医療が必要です。


小児期から成人期に変わること 移行期医療が必要な理由
体や心の状態が変わる 成長とともに体や心が変化します。生活習慣病の予防、妊娠・出産、心の健康など、成人期に合った健康管理が必要になります。小児診療科だけでなく、成人診療科との連携が必要になることもあります。
生活環境が大きく変わる 進学、就職、一人暮らし、結婚などによって生活が変化します。必要に応じて、自分の病気や必要な配慮について、学校や職場へ伝える準備も行います。
医療費助成や福祉制度が変わる 小児慢性特定疾病など、年齢によって対象や手続きが変わる制度もあります。成人期には、病気や状態に応じて利用できる制度が変わる場合があります。


成人診療科へ移ることだけではない(病気の理解・自己管理・意思決定の支援)

移行期医療で大切なのは、成人診療科へ移る「転科」だけではありません。患者さん本人が必要なサポートを受けながら医療に関わっていく、自立支援の視点も大切です。

自分の医療に関わるためには、病気について理解することや、体調を管理すること、治療について自分の希望を伝えることへの支援が必要です。

患者さんの年齢や理解に合わせて、次のようなことに少しずつ取り組みます。

● 自分の病名や、おもな症状を知る
● 薬を飲む理由を理解する
● 体調の変化を伝える
● わからないことを医師へ質問する
● 生活のなかで困っていることを相談する
● 治療の選択肢について説明を聞く
● 治療について自分の希望を伝える

すべてを一度にできるようになる必要はありません。患者さん本人が自分の言葉で説明したり、治療について決めたりすることが難しい場合もあります。

移行期医療では、どのような説明や支援があれば、本人が自分の医療に参加できるかを考えることが重要です。たとえば、伝えたいことを箇条書きにしたり、絵や写真を使ったり、いくつかの選択肢から選べるようにしたりなど、本人が内容を理解し、自分の考えを伝えやすい方法を一緒に考えます。


移行の方法は一人ひとり異なる(転科・併診・小児診療科での継続診療)

移行期医療を始める年齢や進め方は、全員同じではありません。病気の状態、患者さん本人の理解や希望、ご家族の状況、地域の医療体制などによって異なります。

大人の年齢になったからといって、すぐに小児診療科から成人診療科へ移る必要があるとは限りません。

おもな診療の方法には、「転科」「併診」「小児診療科での継続診療」の3つがあります。


診療の方法 内容
成人診療科へ転科する 小児診療科から成人診療科へ、診療を少しずつ引き継ぎます。
小児診療科と成人診療科を併診する 小児診療科でこれまでの病気を診てもらいながら、成人期に必要な診療を成人診療科で受けます。小児科医が子どものころから続く病気を診て、成人診療科の医師が成人期に起こる病気や合併症を診る場合もあります。
小児診療科で診療を続ける 希少疾患などで成人診療科への転科が難しい場合は、小児診療科で診療を続けることがあります。その場合も、必要に応じて成人診療科や地域の医療機関と連携します。

どの方法を選ぶ場合も、成人期に必要な医療を途切れさせないことが大切です。現在の主治医と相談しながら、患者さん本人とご家族が納得できる方法を考えます。

病気や生活の状況が変わったときは、診療の方法を見直すこともできます。


患者さん本人とご家族が知っておきたいこと

移行期を迎えるにあたり、患者さん本人とご家族が事前に確認しておきたいポイントは、次のとおりです。

● 本人が自分の病気や治療、服用している薬について少しずつ理解する
● 本人が中心となって医療を受けるために、ご家族の関わり方を話し合う
● 不安なことやわからないことを整理し、医療機関や支援機関に相談する

厚生労働省の「<保護者御本人向け>移行期医療支援の理解促進のためのリーフレット」には、自分の病気や体の状態を説明すること、薬を管理すること、移行の時期や方法を医師と話し合うことなど、移行期に知っておきたい内容がわかりやすく示されています。二次元コードから説明動画も見られるため、より詳しく知りたい方は確認してみてください。

また、年齢によって、利用できる医療費助成や障害福祉サービスの対象、申請方法などが変わる場合もあります。成人後に利用できる制度や必要な手続きについて、自治体の窓口や相談支援機関へ確認しておくとよいでしょう。


まとめ

移行期医療とは、子どものころから続く病気がある方が、大人になったあとも必要な医療や福祉の支援を受け続けられるようにする取り組みです。

小児診療科から成人診療科へ移ることだけではなく、患者さん本人が病気や治療について知り、必要な支援を受けながら自分の医療に関わるための準備も含まれます。

移行の方法や進める時期は、病気の状態や本人の希望、地域の医療体制などによって一人ひとり異なります。本人とご家族、主治医で相談しながら少しずつ考えていきましょう。