2026/10/27 公開
「今後の通院や治療について、主治医にどんなことを相談すればよいのだろう」
「移行先の病院には、これまでの治療や支援の情報をどうやって引き継ぐのだろう」
「移行がうまく進まないときは、誰に相談すればよいのかな」
子どものころから難病・希少疾患(きしょうしっかん)の治療を続けている方にとって、成人期の医療へ移ることは、単に受診する診療科を変えるだけではありません。必要な医療を途切れさせないために、患者さんの状態や希望に合わせて、医療機関や診療方法を検討する必要があります。
移行を安心して進めるためには、今後の診療方法や紹介先、引き継ぐ医療情報、利用できる支援などを一つずつ確認することが大切です。
この記事では、主治医への相談の仕方や、引き継ぐ医療情報、困ったときに利用できる相談先など、移行期医療の進め方や必要な準備について、具体例をあげながら解説します。移行期医療に不安を感じたときや、わからないことがあるときは、一人で抱え込まず、身近な医療者へ伝えてみてください。
この記事でわかること
移行期医療の不安や困りごとに応じた相談先と、主治医への相談方法や医療情報の引き継ぎなど、支援を受けながら安心して進めるためのポイントがわかります。

移行期医療は、患者さん本人やご家族だけで準備を進めるものではありません。希望や質問があるときは、まず主治医に相談できます。必要に応じて看護師や医療ソーシャルワーカーなどが支援に関わる場合もあります。
また、移行期医療は、一定の年齢になったら必ず成人診療科(成人科)へ転院するわけではありません。移行の時期や方法は、病気の状態、本人の理解や希望、地域の医療体制によってさまざまです。成人科へ転院するほか、小児科と成人科の両方を受診する「併診」や、小児科での診療を継続する場合もあります。本人に合った方法を、医療者と相談しながら選んでいきます。
ご家族の支援も、移行期医療を進めるうえで大切な支えの一つです。ただし、ご家族がすべてを代わりに決めるのではなく、本人の気持ちや希望を確認しながら、必要な部分を一緒に考えていきます。移行期医療への不安やわからないことがあるときは、一人で抱え込まず、身近な医療者へ伝えることからはじめましょう。
移行期医療の準備では、主治医と今後の見通しや選択肢を確認します。
まずは、移行を考えはじめる時期や、これからの受診方法について聞いてみましょう。
おもな確認事項と質問の具体例は次のとおりです。
| 確認すること | 質問の例 |
|---|---|
| 移行を考える時期 | 「いつごろから具体的な準備をはじめるとよいでしょうか」 |
| 今後の診療方法 | 「今後はどのような受診方法が考えられますか」 |
| 候補となる診療科・医療機関 | 「この病気を診てもらえる診療科や医療機関はありますか」 |
| 移行の進め方 | 「紹介先を受診するまでに、何を準備すればよいでしょうか」 |
| 移行後の受診 | 「紹介先を受診したあとも、小児科の受診も続ける場合がありますか」 |
成人科の受診を始めたあとも、すぐに小児科の受診が終わるとは限りません。
患者さんの状況に応じて、小児科の受診間隔を少しずつ空けるなど、両方の診療科が連携して受診方法を調整する場合があります。
今後の受診について、主治医と確認しておきましょう。
成人科へ紹介される際は、これまでの病状や治療経過などを紹介先へ伝えるため、いくつかの書類を用いる場合があります。
作成する人は書類によって異なるため、患者さん本人がすべてを用意するわけではありません。
| 書類 | 目的・内容 | おもに作成する人 |
|---|---|---|
| 診療情報提供書 | 病名や治療経過などを紹介先へ伝えるための書類 | これまでの担当医 |
| 自分用の医療サマリー | 患者さん自身の医療情報をまとめたもので、紹介時に一緒に渡す場合がある | 患者さん本人やご家族 |
| 転院サマリー | 紹介先への引き継ぎに使われる書類で、必要に応じて作成される場合がある | 看護師など医療機関側 |
| 移行準備状況に関する資料 | 健康管理の状況や、必要なサポートなどを確認する資料 | 患者さんと医療者が一緒に確認・作成 |
移行準備状況に関する資料には、健康管理に必要なサポートや、準備がどこまで進んでいるかを記載します。患者さんだけで作成するのではなく、医療者と話し合いながら確認する資料です。紹介先でも必要な支援を続けられるよう、これまでの準備状況を引き継ぐために使われます。
引き継ぎに使用する書類は、すべての患者さんで同じとは限りません。紹介先へどの書類が渡されるのか、患者さんが持参するものはあるのかを、受診前に現在の医療機関へ確認しましょう。
移行期医療の準備を進めるうえでは、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーなどが、それぞれの役割を生かしてチームでサポートする体制がとられる場合があります。相談できる内容は、職種によって異なるため、誰に相談すればよいかわからない場合は、まず主治医や看護師に困っていることを伝え、どこに相談できるか確認してみましょう。
主治医、看護師・コーディネーター、医療ソーシャルワーカーに相談できる内容の例は以下のとおりです。
● 主治医:今後の治療の見通しや、成人科への移行方法
● 看護師・コーディネーターなど:移行への不安や、移行に向けた調整
● 医療ソーシャルワーカー:治療と学業・仕事の両立、療養生活に伴う心理的・社会的・経済的な困りごと、利用できる行政サービス
厚生労働省の調査では、移行できたケースにおいて、看護師やソーシャルワーカー、コーディネーターなどが、移行時の不安へのサポート、転院調整、成人診療科への情報提供などに関わっていたことが示されています。
医療ソーシャルワーカーには、患者さん本人だけでなく、ご家族も相談可能です。面接では、不安な気持ちや学校、仕事、お金などの困りごとを一緒に整理し、一人ひとりの状況に合った支援を検討します。困りごとが大きくなるまで待つ必要はありません。今後の生活や費用について気になることがあれば、早めに相談してみましょう。
成人期の診療に対応する医療機関が見つからない、医療機関どうしの連携が進まないときは、地域の相談窓口を利用できることがあります。
相談先ごとに対象者や役割が異なるため、困りごとに合う窓口を確認しましょう。
| 相談したいことの例 | 相談先 | 相談・支援の内容 |
|---|---|---|
| 成人期に診療を受けられる医療機関や医療機関どうしの連携について相談したい | 移行期医療支援センター |
|
| 生活や仕事について相談したい | 難病相談支援センター |
|
| 福祉制度や日常生活の不安について相談したい | 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の相談窓口 |
|
移行期医療支援センターでは、移行に関する相談支援や、医療機関との連携などがおこなわれています。ただし、すべての都道府県に設置されているわけではなく、対応している相談内容にも違いがあります。必要な場合は、自治体のWebサイトで利用できる窓口や相談方法を確認してみましょう。
小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の相談窓口は、小児慢性特定疾病の患者さんとご家族が対象です。
相談窓口は、お住まいの自治体のWebサイトなどで確認できます。
難病相談支援センターの所在地は、難病情報センターのWebサイトから確認できます。
出典:難病情報センター|都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧
移行期医療の時期や進め方は、すべての患者さんで同じではありません。
病気や治療の状況、生活上の希望などを踏まえ、主治医と相談しながら準備します。
まずは、今後の診療方法や成人期の医療機関への移行について、現在の主治医に確認しましょう。
紹介先が決まったら、診療情報提供書など、医療情報を引き継ぐための書類を準備してもらいます。疑問や生活上の不安は、看護師や医療ソーシャルワーカーにも相談できます。また、移行期医療支援センターや難病相談支援センターなど、地域の相談窓口を利用できることもあります。
移行が思うように進まない場合も、一人で抱え込む必要はありません。
現在の医療機関や地域の相談窓口と話し合いながら、自分に合った方法を探していきましょう。