患者数が少ないことによって生じる

難病特有の社会課題とは

患者数が少ないことによって生じる難病特有の社会課題

難病と聞くと「治りにくい病気」というイメージがあるかもしれません。
ですが、患者さんやご家族が実際に困っていることは、病気そのもののつらさだけではありません。
● 診断がつくまでに時間がかかる
● 周りに理解されにくい
● 使える薬が少ない
一つひとつは別の問題に見えます。しかし、こうした難しさの背景の一つにあるのが、患者さんの数が少ないことです。
数が少ないと病気は知られにくく、知られていないことが医療、暮らし、薬の開発でも少しずつ形を変えて表れます。
この記事では、その全体像を整理します。


「難病」と「指定難病」は同じではない

「難病」と「指定難病」は、言葉が似ているため混同しやすいものです。ここでは、それぞれの意味と違いを順に見ていきます。

難病法は「難病」をどう定めているか

難病には、法律による定義があります。定めているのは「難病の患者に対する医療等に関する法律」です。長い名前なので、ふだんは「難病法」と呼ばれます。
難病法が「難病」としているのは、次の四つにあてはまる病気です。

● 発病の仕組みが明らかでない
● 治療方法が確立していない
● 希少な病気である
● 長い療養が必要になる

ふだん使う「難病」という言葉は、重い病気全般を指すことがあります。法律でいう「難病」は、それより範囲がせまくなります。

希少な病気は「希少疾患」とも呼ばれます。難病と希少疾患の関係については、かんしん広場の「希少疾患とは?」のページが参考になります。

指定難病は難病のうち要件を満たすものを国が指定したもの

難病のなかで、国が指定したものを「指定難病」といいます。難病と指定難病は、同じではありません。
指定難病になるのは、さきほどの四つに加えて、次の二つを満たす病気です。

● 患者さんの数が人口のおおむね千分の一(0.1%)程度に達しないこと
● 診断基準が定まっていること

診断基準とは、その病気であると判断するための客観的な決まりのことです。指定難病は、2025年4月1日から348疾病になりました。

指定難病には、医療費を助成する仕組みがあります。ただし、指定難病と診断されれば、どなたでも受けられるというものではありません。病状の程度などの条件があり、申請と認定の手続きが必要です。

手続きの流れについては、かんしん広場の「難病の医療費助成制度」のページをご覧ください。

要件のなかに「診断の基準が定まっていること」がある

さきほど挙げた二つ目の「診断基準が定まっていること」をもう少し見てみます。
診断の基準は、その病気についての研究が積み重なり、共通の目安がまとまってはじめて定まります。患者さんの数が少ない病気ほど、その積み重ねに時間がかかります。

指定難病として指定されるためには、客観的な診断基準等が確立していることも要件の一つです。
そのため、疾患についての知見がまだ十分に集まっておらず、客観的な診断基準等が確立していない場合には、その時点では指定難病の要件を満たしません。

難病の定義に当てはまる疾病であっても、指定難病の要件をすべて満たしていなければ、医療費助成の対象となる指定難病には指定されません。

一方、病名がまだついていない患者さんは、これとは別に『診断に至っていない段階』にあります。通常の診療で診断が難しい患者さんについては、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)のような研究的な取り組みも進められています。

その場合にも、相談できる窓口や探せる情報はあります。この記事の後半で整理します。


患者さんの数が少ないことで起こること

患者さんの数が少ない疾患では、一般の人や医療者がその病気に接する機会が限られる場合があります。また、症状がほかの病気でもみられるものであったり、専門的な検査が必要だったりする病気では、診断までに時間を要することがあります。

病気が知られていないと診断までに時間がかかることがある

だるさ、痛み、熱、めまい。こうした症状は、難病以外のよくある病気でも起こります。
症状はよくあるものでも、難病が原因になっている場合は、最初からその病気を疑うのが難しく、診断までに時間を要することがあります。

検査で異常がはっきりしないこともあれば、異常が見つかっても病名に結びつかず、受診や検査を重ねる人もいます。
診断までに時間がかかる仕組みについては、本シリーズの記事2で扱っています。

外からわかりにくく、そのつど説明が必要になる

難病の症状の多くは、外から見えません。痛み、だるさ、内臓の働きの低下などは、外見だけではわかりにくい症状です。

職場や学校で配慮が必要な場面では、周囲から説明を求められたり、自分から状態を伝えたりすることがあります。相手が変われば、同じ説明を繰り返すことにもなります。

知られていない病気では、病名を伝えても、それだけで状況を理解してもらえるとは限りません。説明を重ねること自体が負担になる場面もあります。
見えにくさから生まれる困難については、本シリーズの記事3で扱っています。

薬の開発が始まりにくい

新しい薬の開発には、長い年月と多額の費用がかかります。
これは薬をつくって届けるまでの仕組みの話であって、病気の重さが軽く見られているのではありません。

使う人が限られることは、企業が開発を判断するときの材料の一つです。こうした条件が重なることは、薬の開発が進みにくくなる一因です。
海外で使われている薬が、日本では承認されておらず使えないケースもあります。
こうしたことは「ドラッグ・ラグ」「ドラッグ・ロス」と呼ばれています。2つの言葉の違いと、薬が届きにくくなる理由は、記事4で扱っています。

情報が集まりにくい

患者さんの数が少ないと、その病気についての情報も集まりにくくなります。
どのような経過をたどるのか。生活のなかで何に困るのか。こうしたことは、多くの記録が集まってはじめてわかってきます。患者さんの数が少ない病気では、その記録がそろいません。

研究や薬の開発を進めるうえでも、情報の少なさそのものが課題の一つです。
患者さんやご家族が日々の暮らしのなかで負う、数字に表れにくい負担については、記事5で扱っています。


少ないことを前提にした仕組みも置かれている

ここまでは、患者さんの数が少ないことから生まれる難しさを見てきました。難病法には、医療費助成だけでなく、調査や研究、相談支援に関する仕組みも定められています。

第27条は、国に対し、難病の発病の仕組み、診断、治療方法に関する調査と研究を進めるよう定めた条文です。法律のなかでは、医療に関する章とは別に「調査及び研究」の章が置かれています。

第29条は、難病相談支援センターについての条文です。センターは、難病のある方やご家族の療養生活を支え、相談や情報提供などを行う施設です。

制度があることと、個々の病気で診断や治療の選択肢がすぐに増えることは同じではありません。それでも、研究を進める仕組みや、生活上の困りごとを相談する入口が法律のなかにあることは確認できます。


いま、できること

ここまでは、難病をめぐる仕組みの話でした。ここからは、いま探せるものの話をします。病名がついている方にも、まだついていない方にも、それぞれ入口があります。

1|自分の病気の情報と同じ病気の人を探す

病名がわかっている場合は、その病気について情報をだしているところを探すところから始めましょう。
かんしん広場の「疾患別検索」では、病名の頭文字をたどって、その病気の情報サイトや、患者会・支援団体を探せます。

病名からうまく探せないときは、「疾患分類検索」も使えます。こちらは、体の部位や病気の分類からたどる形です。

患者さんの数が少ない病気では、情報を出しているところや団体が見つからないこともありますが、体の部位や分類からたどると、近い領域の情報にたどりつけることがあります。
同じ病気の方の経験が、生活の工夫や相談先を知る手がかりになることもあります。

2|病名がまだつかないとき

検査を受けても異常が見つからず、病名がつかない時期が続くことがあります。
そうしたときにできることの一つが、症状の記録を残しておくことです。いつから、どのようなときに、どう変化したか。受診した医療機関や検査の結果もあわせて残しておくと、次に診てもらう医師に伝えやすくなります。
記録の残し方は、「記事2」で扱っています。

難病が疑われている場合や、難病に関する相談先を探したいときは、受診中の医療機関や地域の保健所、難病相談支援センターなどが入口になります。

難病相談支援センターは、診断をつけるための医療機関ではありません。療養生活に関する相談や情報提供などを行う窓口です。相談内容や対応方法は地域によって異なるため、各センターの案内をご確認ください。

3|制度の対象になるかどうかは制度ごとに確認する

指定難病の医療費助成を受けられるかどうかは、病名だけでは決まりません。病状の程度などの条件があり、申請と認定を経ます。くわしくは、かんしん広場の「難病の医療費助成制度」のページにまとまっています。

障害者手帳と障害福祉サービスは、医療費助成とは別の制度です。
障害者手帳は、障害の種類や程度など、それぞれの認定基準に基づいて判断されます。障害福祉サービスを定めているのは、障害者総合支援法という法律です。この法律の対象疾病にあてはまり、支援が必要と認められれば、障害者手帳を持っていなくても利用できる場合があります。

制度によって対象や条件が違うため、「指定難病ではないから使えない」「指定難病だから使える」とは一律に決められません。

かんしん広場では、「障害者手帳制度について」と「難病患者が利用できる障害福祉サービス」のページで、それぞれの制度を紹介しています。

4|ひとりで抱えないための入口

同じ病気の患者さんやご家族が集まる場として、患者会があります。
かんしん広場には「患者会・支援団体紹介」のページがあり、団体を探せます。情報を交換したり、経験を聞いたりできる場です。

ただ、すべての病気に身近な患者会があるわけではありません。人とつながること自体が負担に感じられる時期もあるでしょう。

参加するかどうかを急いで決める必要はなく、「こうした場もある」と知っておけば、必要になったときの選択肢になります。


おわりに

難病をめぐる困りごとは、病気そのものの症状だけで決まるわけではありません。患者さんの数が少ないことで、診断に必要な経験や情報が集まりにくくなり、周囲への説明、薬の開発、研究にも別の難しさが重なります。

一方、難病法には研究を進める仕組みや相談支援の枠組みがあり、病名や状況に応じて探せる情報や制度もあります。

すべてを一度に知る必要はありません。いま困っていることが診断なのか、暮らしなのか、制度なのかを一つずつ確かめると、次に探す情報や相談先が見えやすくなるでしょう。


関連情報

● 病名から情報を探すときは、かんしん広場の「疾患別検索」「疾患分類検索」のページをご覧ください。

● 希少疾患そのものについては、「希少疾患とは?」のページで紹介されています。

● 医療費の助成、障害者手帳、障害福祉サービスについては、「難病の医療費助成制度」「障害者手帳制度について」「難病患者が利用できる障害福祉サービス」のページがあります。

● 療養生活や制度について相談できる窓口は、「難病相談支援センター」のページで紹介されています。

● 同じ病気の方とつながる場については、「患者会・支援団体紹介」のページをご覧ください。

● 診断までに時間がかかる理由は「記事2」で、外見からわかりにくい困難は「記事3」で扱っています。

● 薬が届きにくい理由は「記事4」で、難病を社会全体でどう支えているのかは「記事5」で扱っています。