筋ジストロフィー 初期症状・気づきやすいサイン

筋ジストロフィーの初期症状は、病型や発症する年齢によって大きく異なります。


出生後まもなく筋力の弱さがみられる場合もあれば、幼児期の運動発達、学校での運動、成人後の日常生活や健康診断をきっかけに気づかれる場合もあります。


症状がゆっくり進むと、「運動が苦手なだけ」「体力がない」「年齢や仕事の疲れによるもの」と考え、本人や周囲が変化に気づきにくいことがあります。

一つの症状だけで判断するのではなく、複数の動作の変化や、以前との違いに注目することが大切です。


監修:国立精神・神経医療研究センター/ TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)センター長、

病院臨床研究・教育研修部門長、脳神経小児科診療部長、筋疾患センター長 小牧 宏文 先生


目次

乳児期に気づかれることがあるサイン

乳児期には、筋肉の力や張りの弱さ、運動発達の遅れなどがみられることがあります。

・首のすわりが遅い

・寝返りやお座りが遅い

・手足の動きが少ない

・抱き上げたときに体がやわらかく感じられる

・体を支える力が弱い

・ミルクや食事を飲み込みにくい

・むせやすい

・体重が増えにくい

・呼吸が浅い、呼吸に力が必要に見える

・関節が硬い

・一部の関節が柔らかすぎる


乳幼児の発達には個人差がありますが、複数の発達項目で遅れがみられる、できるようになった動作が増えない、哺乳や呼吸にも気になる点がある場合は、小児科に相談しましょう。


幼児期から学童期に気づかれることがあるサイン

歩き始めた後は、歩行、走る、跳ぶ、立ち上がるなどの動作に筋力低下が現れやすくなります。


・歩き始めが周囲の子どもより遅い

・何もないところでよく転ぶ

・走り方がぎこちない

・走る速度が遅い

・両足をそろえてジャンプできない

・片足立ちが難しい

・階段を一段ずつ上る

・階段で手すりを強く使う

・床から立ち上がるときに床や膝、太ももへ手をつく

・歩くときに腰が左右に揺れる

・かかとが床につきにくく、つま先で歩く

・長い距離を歩きたがらない

・抱っこを求めることが増えた

・ふくらはぎが太く、硬く見える

・腕を上げにくい

・着替えや洗髪に時間がかかる


保育園や幼稚園、学校で「集団についていきにくい」「転ぶことが多い」「体育の動きが難しい」と指摘されることがあります。

運動能力には個人差がありますが、苦手な動作が増えている、以前できていたことが難しくなっている場合は、単なる運動の得意不得意とは別に考える必要があります。


デュシェンヌ型では、歩き始めの遅れ、転びやすさ、走れない、ジャンプができない、立ち上がる際に膝へ手をつく、歩くときに体が左右に揺れるなどが、診断の手がかりとして挙げられています。

思春期から成人期に気づかれることがあるサイン

成人では、仕事、家事、通勤、運動などの日常動作の変化として現れることがあります。


・椅子や床から立ち上がるときに手を使うようになった

・階段や坂道が以前よりつらい

・歩く速度が遅くなった

・つまずいたり、転んだりすることが増えた

・長く歩くと疲れやすい

・重い物を持てなくなった

・腕を上げにくくなった

・洗髪や洗濯物を干す動作が難しい

・高い棚へ手が届きにくくなった

・肩甲骨が浮いて見える

・左右の肩の高さや腕の上がり方が違う

・目をしっかり閉じにくい

・口をすぼめにくい

・手を強く握ったあと、すぐに開けない

・足先が上がりにくく、つまずきやすい

・食事に時間がかかる

・食べ物や水分でむせやすい


「以前より時間がかかる」「手すりや家具につかまることが増えた」「休憩が必要になった」といった、小さな変化も大切な手がかりです。



筋力以外の症状が手がかりになる場合

病型によっては、筋力低下よりも先に、心臓、呼吸、目、飲み込みなどの症状が見つかることがあります。

・動悸がする

・脈が飛ぶように感じる

・めまいや失神がある

・横になると息苦しい

・朝起きたときに頭痛がする

・日中の眠気が強い

・睡眠中のいびきや呼吸の乱れを指摘された

・まぶたが下がってきた

・若い時期に白内障を指摘された

・食べ物が喉につかえる

・むせることが増えた

・原因の分からない体重減少がある


心臓や呼吸の変化は、本人が自覚しにくい場合があります。

家族から「眠っているときの呼吸がおかしい」「以前より声が小さい」と指摘された場合も、受診時に伝えましょう。

血液検査から気づく場合

筋肉が傷つくと、筋肉の細胞内にあるCK(クレアチンキナーゼ)が血液中へ出て、検査値が高くなることがあります。

ASTやALTは肝機能の検査項目として知られていますが、筋肉にも含まれているため、筋肉が傷ついた場合にも上昇します。

肝臓を調べても原因が分からず、CKも高い場合は、筋疾患がないかを確認することがあります。

健康診断、感染症の検査、入院前検査など、別の目的で受けた血液検査をきっかけに、症状が目立たない段階で筋ジストロフィーが疑われることもあります。

ただし、CKは激しい運動、筋肉のけが、注射、ほかの筋疾患などでも上昇します。検査値だけで筋ジストロフィーと判断することはできません。

家族や親族の病歴も手がかりになります

家族や親族に筋ジストロフィーと診断された人がいる場合だけでなく、原因不明の筋力低下、若い頃からの歩行障害、心筋症、不整脈、突然死などがある場合は、診察時に伝えることが大切です。

一方、家族や親族に同じ症状の人がいなくても、筋ジストロフィーを否定することはできません。

症状を記録しておきましょう

筋力低下はゆっくり変化することがあり、毎日の生活の中では気づきにくい場合があります。

気になる動作や症状がある場合は、簡単に記録しておくと診察時に役立ちます。

「階段で手すりを使うようになった」「学校から帰ると横になることが増えた」「食事中に週に何度かむせる」など、実際の生活で起きていることを書きます。

歩ける距離や転倒した回数などを毎日細かく測る必要はありません。変化に気づいたときに記録し、診察時に伝えられるようにしておく程度で構いません。

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