移行期医療では何が変わる?
成人期までに知っておきたい医療の変化

2026/10/27 公開

「小児科から内科などに移ると、今までと何が変わるのだろう」

「移行期医療では、どんなことが変わるのだろうか」

「大人になると、医療費の制度も変わるのかな」


子どものころから難病・希少疾患(きしょうしっかん)の治療を続けている場合、大人になるにつれて医療の受け方が変わることがあります。
この時期に、必要な医療を続けながら成人期の医療へつないでいく取り組みを「移行期医療(いこうきいりょう)」といいます。

成人期に向けて変わるのは、受診する診療科だけではありません。診察や治療への本人の関わり方、利用できる医療費の制度なども変わる場合があります。

ただし、変化する時期や方法は一人ひとり異なります。一定の年齢になったら、必ず全員が同じ方法で大人の医療へ移るわけではありません。
病気の状態や本人の希望、地域の医療体制などに合わせて、考えることが大切です。


この記事では、小児医療から成人医療へ移るときに変わることを、わかりやすく紹介します


この記事でわかること

受診する診療科や治療への関わり方、医療費助成などが、成人期に向けてどのように変わるのかがわかります。


小児医療から成人医療へ移ると何が変わる?

移行期医療の準備はいつから始める?

小児医療から成人医療へ移るときに変わることがあるものは、受診する診療科、診察や治療への関わり方、利用する医療費の制度などです。

ただし、これらが同じタイミングで一度に変わるわけではありません。診療科や医療の受け方は、病気の状態や本人の状況などに合わせて少しずつ変わっていきます。


一方、医療費助成のように、年齢によって対象や手続きが変わる制度もあります。小児医療から成人医療へ移る際に変わることと変わり方の例は以下のとおりです。

変わること変わり方の例
受診する診療科病気の状態や受け入れ先などに合わせて、全身を総合的に診る小児科から、臓器別の診療科へと少しずつ変わる場合がある
診察や治療への関わり方本人の理解や成長に合わせて、少しずつ本人が主体的に関わるように変わっていく
医療費助成18歳や20歳など、年齢によって対象や手続きが変わる場合がある

このように、成人期に変わることは、内容によって変わる時期や進み方もさまざまです。

ここからは、「受診先や診療体制」「診察や治療の決め方」「医療費助成や福祉制度」に分けて、具体的に見ていきます。


受診する診療科や医療機関、診療体制の変化

成人期には、これまで通っていた「小児診療科(小児科)」から、大人を診る診療科へうつることがあります。

成人をおもに診る診療科が「成人診療科(成人科)」です。


小児科は子どもの体全体を総合的に診る特徴がありますが、成人科は、心臓なら「循環器内科」、腎臓なら「腎臓内科」というように、体の部位や病気ごとに分かれています。そのため、小児科で複数の症状を診てもらっていた人が、成人期には複数の診療科や医療機関へ通うこともあるでしょう。


また、成人期には、大きな病院だけでなく、地域の医療機関などと連携し、病気や診療内容に応じて役割を分けながら診療を受ける形もあります。


大人になったからといって、全員が一度に小児科を卒業して成人科へうつるわけではありません。自分にどのような診療体制(転科や併診など)が合うかは、病気の状態や本人の希望などによって一人ひとり異なります。


具体的な診療体制の形(転科・併診・継続診療)については、【移行期医療とは?なぜ必要なの?子どもの医療から大人の医療へ】で詳しく解説しています。


受診する診療科や病院が増えたり変わったりする場合は、「どの診療科で何を診てもらうのか」「これまでの治療やお薬の情報をどのように新しい主治医に共有するのか」をあらかじめ確認しておくと次の受診への準備をスムーズに進められるでしょう。


本人の理解や希望も確認しながら、本人に合う方法を考えることが大切です。


診察の受け方や治療の決め方が「本人中心」になる

小児医療と成人医療では、診察の受け方や治療を決めるときの関わり方も「本人中心」に変わっていきます。
「本人中心」とは、成人期の生活もふまえ、どのような方法なら無理なく治療を続けられるかを、主治医などと一緒に考えていくことです。


小児期は、家族が主治医から説明を聞いたり、本人に代わって症状を伝えたりする場面も多かったかもしれません。一方、成人医療では、本人の考えや希望を確認しながら、これからの治療について決めていく関わりが中心となります。小児期よりも、本人が主治医の説明を聞き、自分の体調や希望を伝える機会が多くなるでしょう。


このように、自分に関わることについて説明を聞き、必要に応じて家族や医療者の支援も受けながら、
自分の考えや希望を伝えて決めていくことが「自己決定(じこけってい)」です。


治療にいくつかの選択肢がある場合は、それぞれのメリット・デメリットを含めて説明を聞き、自分が大切にしたいことや希望を伝えながら、決めていくことになります。


成人医療において「本人中心」で考えることと、それぞれで主治医と確認したい内容の例を以下の表にまとめました。


本人中心で考えること確認したい内容の例
治療方法期待できる効果、副作用や体への負担、ほかの治療方法のメリット・デメリット
薬飲み方や管理で困っていること
通院学校や仕事、日々の生活と両立できる方法

成人期では、進学や就職など、一人ひとりのライフスタイルに合わせて自分に合う治療の形を考えていく必要があります。

主治医に自分の生活の様子を伝え、相談しながら、より良い方法を一緒に見つけていくことが大切です。


医療費助成や福祉制度はどう変わる?

成人期になると、利用していた医療制度が変わる場合があります。

そのひとつが、医療費の負担を軽くする医療費助成(いりょうひじょせい)です。


● 医療費助成

治療にかかる医療費の自己負担の一部を軽くする制度です。

対象は原則として18歳未満ですが、18歳になる時点ですでに制度の対象となっており、その後も治療が必要と認められた場合は、助成によっては20歳未満まで含まれることがあります。


たとえば、以下のような医療費助成があります。

医療費助成概要
小児慢性特定疾病(しょうにまんせいとくていしっぺい)おもに子どものころに利用する医療費助成制度です。
18歳以上は「成年患者」となり、これまで家族がおこなっていた申請手続きは、患者さん本人の名前でおこなうことになります。
指定難病(していなんびょう)指定難病の対象となる病気であることに加え、病気の重さや医療費などの条件を満たし、申請して認定を受ける必要があります。
小児慢性特定疾病医療費助成を利用していた人が、成人後に自動的に指定難病の医療費助成へ切り替わるわけではありません。

医療費助成だけでなく、成人期を見据えて福祉サービスなどの支援についても確認しておくとよいでしょう。


利用できる制度や必要な手続きは、年齢や病気、居住地の自治体によって異なるため、個別の確認が必要です。

「現在利用している制度がいつまで使えるのか」「成人後に利用できる制度があるのか」を早めに確認しておくと、必要な手続きを整理しやすくなります。


変わらないこともある(必要な医療を継続し、困ったときは相談する)

成人期になっても、子どものころから続けてきた治療や経過観察が必要な場合があります。大人になったからといって、これまでの病気への対応が終わるわけではありません。


厚生労働省の令和7年度版 成人移行期支援コアガイドナビによると、移行期の医療について「成人期になっても良質な医療が継続されること」を目指すとされています。

ただし、医療を継続するということは、子どものころと同じ診療をそのまま続けることではありません。年齢を重ねるなかで、もともとの病気の状態や合併症が変化することもあります。さらに、成人期には生活習慣病など、大人になってから注意したい健康上の問題が加わったりする場合もあるでしょう。

そのため、成人期に必要なのは、子どものころとまったく同じ診療を続けることではありません。年齢や病気、体の状態の変化に合わせて、その時に必要な医療を受け続けることが大切です。


通う診療科や医療機関が変わっても、必要な医療を途切れさせないという目的は変わりません。
受診や治療について困ったことがあれば、必要に応じて主治医や医療スタッフなどに相談しましょう。


まとめ

移行期医療では、成人期に向けて、通う診療科や医療機関、診察や治療への本人の関わり方、利用する医療費助成や福祉制度などが変わる場合があります。

変わる時期や方法は一人ひとり異なります。地域の医療体制や医療費助成、福祉制度などを確認し、必要な手続きを早めに把握しておくと進めやすくなるでしょう。


大人になっても、治療や経過観察が続く場合もあります。

受診先や制度など、変わる内容を一つずつ確認しながら、自分に合った形で成人期の医療につなげていきましょう。