検査で異常なし、でも症状は続く。

難病の診断に時間がかかる理由

検査で異常なし、でも症状は続く。 難病の診断に時間がかかる理由

体調のすぐれない状態が続いているのに、検査を受けても異常が見つからない。病院を変えても、はっきりした病名がつかない。そうした時間を過ごしている方がいます。
検査で異常が見つからない理由は、いくつも考えられます。時間とともに落ち着いていくものもあれば、原因はあるけれど、その検査では捉えにくいというものもあります。難病は、そのうちの一つにすぎません。
ただ、難病や希少疾患では、病名がつくまでに時間がかかることが実際に起こります。そこには、患者さんや医師の努力だけでは解決できない理由がかかわっています。
この記事では、その理由と、いまできることを整理します。


症状そのものは、めずらしくない

難病には、法律上の定義があります。「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」では、発病の仕組みが明らかでなく、治療方法が確立していない希少な病気で、長期の療養を必要とするものを「難病」としています。希少疾患は、患者さんの数が少ない病気を広く指す言葉です。原因や治療の方法がわかっているものも含みます。

難病の症状の多くは、その病気にだけ現れる特別なものではありません。だるさ、痛み、しびれ、熱や体重の変化。こうした症状は、ありふれた原因でも起こりますし、まれな病気でも起こります。

医療では多くの場合、まずよくある原因から考えていきます。同じ症状であれば、よくある病気である可能性のほうが高いからです。

けれども、原因がまれな病気だった場合、よくある原因を一つずつ確かめていく過程に時間がかかります。検査を行い、結果を確認し、次に何を調べるかを考える。この繰り返しが続くためです。さらに症状が日によって変わることも、確かめることをさらに難しくします。

このように、症状だけから原因を見分けるのは簡単ではありません。同じ症状でも、原因となる病気は一つとは限らないのです。


医師も「見たことのない病気」は思い浮かべにくい

診断は、頭の中にある病気の候補を絞り込みながら進みます。そのため、候補として思い浮かばない病気には、なかなかたどり着けません。

患者さんの数が少ないため、診療の経験を持つ医師が限られる病気もあります。名前を知ってはいても、実際に診た経験がない。この状態で、目の前の症状からその病気を思い浮かべるのは簡単ではありません。

ある病気を疑うことができるのは、その病気を知っているときだけです。ですから、診断に時間がかかったからといって、必ずしも「見逃された」ということではありません。まれな病気を思い浮かべるきっかけを得にくいことも、その理由の一つです。

診療科の分かれ方も関係します。症状が体のいくつかの場所にまたがると、どの科でも「ここで診る範囲とは違うかもしれない」と判断されることがあります。
なぜ患者さんの数が少ないことがこれほど多くの困りごとにつながるのかについては、本シリーズの記事1で扱っています。


検査は「何を調べるか」によって見つけやすい異常が変わる

検査には、それぞれ得意なことと苦手なことがあります。同じ検査でも、どの病気や異常を疑っているかによって、調べる範囲や方法が変わることがあるからです。ここまでは、診断する側から見た話でした。ここからは、CTやMRIなどの画像検査を例に、検査にはどのような特徴があるのかを見ていきます。

「異常なし」は、その検査が答えられる範囲の結果

検査を受けると、結果に「明らかな異常所見を認めず」と書かれることがあります。多くの方は、これを「どこも悪くない」という意味で受け取ります。

けれども、この一文が答えているのは、あくまでその検査で見える範囲についてです。「この検査を行ったうえでは、はっきりした異常は見当たらなかった」という意味です。体の状態すべてについての判定ではありません。

検査によって、見つけやすい異常と、見つけにくい異常は変わります。ですからこの結果は、診断を確かめていくための材料の一つであって、結論ではないのです。

検査は、可能性を少しずつ絞りながら進む

検査は、可能性を少しずつ絞りながら次のように進みます。

まずAの検査をしてみましょう。
Aで何も出なければ、まだ別の可能性が否定できないので、次はBの検査をしてみましょう。

おおよそ、このような流れです。

「何も出なかった」という結果は、医療の側から見れば「一つの可能性が低そうだと分かった」ということです。それが、次に進むための根拠になります。

ここに、受け止め方のずれが生まれる場合があります。同じ「異常なし」という結果でも、医療の側は「一つ絞り込めた」と見ていますが、患者さんは「またダメだった、振り出しに戻った」と受け取る方もいるかもしれません。

空振りが続いているように見えていたとしても、手順の上では進んでいることがあります。ただし、進んでいるからといって、待つ時間の負担が軽くなるわけではありません。

「原因を探す検査」と「くわしく調べる検査」は違う

もう一つ、知っておきたいことがあります。病名がある程度わかっていて、その病気をくわしく調べるときと、まだわからない原因を探すときとでは、選ぶ検査や調べ方が変わることがあります。

一つの検査だけで、すべての病気を見つけることはできません。そのため、症状やこれまでの検査結果を手がかりに、「何を調べるのか」を考えながら検査を進めます。想定していなかった異常が偶然見つかることもありますが、すべての可能性を一度に調べるのは困難です。

ここに、診断がつかないときの難しさがあります。手がかりが少ない段階では、どの検査を優先するか決めること自体が難しくなります。まれな病気では、その病気を疑うきっかけを得にくいことも重なり、診断までに時間がかかることもあるのです。


診断できる医師が、どこにでもいるわけではない

診断までに時間がかかる理由は、検査だけではありません。まれな病気では、診療経験のある医師が限られていたり、診断の確定に専門的な検査が必要だったりすることもあります。

専門の医師は地域的にかたよっている

難病や希少疾患の診療経験が豊富な医師が、住んでいる地域にいるとは限りません。まれな病気ほど、診断できる医師は限られ、特定の医療機関に集まりやすくなります。

地域による診療体制の差に対応するため、国は難病の医療を提供する体制を整えてきました。都道府県では、難病の診断や治療の中心となる「難病診療連携拠点病院」が指定され、地域の医療機関と連携する仕組みがつくられています。

ただし、こうした病院などを受診する際は、現在通っている医療機関からの紹介が必要になる場合があります。紹介状の頼み方については、このあとの章で説明します。

確定に遺伝子の検査が必要な病気もある

病気によっては、遺伝子を調べる検査(遺伝学的検査)が、診断を確定するために必要です。指定難病(国が指定する難病で、一定の要件を満たす場合に医療費助成の対象となります)のなかにも、診断基準に特定の遺伝子の変化が含まれている病気があります。遺伝学的検査のなかには、健康保険が使えるものもあります。

遺伝子を調べると聞くと、ご家族への影響が気になる方もいるかもしれません。検査を受けるかどうか、結果をどう受け止めるか、ご家族にどう伝えるかなどを相談できるのが、遺伝カウンセリングです。専門的な知識を持つ医療者と一緒に考えることができ、遺伝カウンセリングを行っている医療機関もあります。


いま、できること

診断までに時間がかかっているとき、自分でできることもあります。ここでは、診察や相談の際に役立つ方法を整理します。すべてを順番に行う必要はありません。できそうなことから始めてみてください。

1|記録をつくる

診断を進めるうえで役立つのが、症状や受診の経過を記録しておくことです。
書いておくとよいのは、次のような内容です。

● いつから症状があるか
● どんなときに強くなり、どんなときに落ち着くか
● これまでどのように変わってきたか
● どの医療機関を受診し、どんな検査を受けて、何と言われたか

完璧にまとめる必要はありません。思い出せる範囲で、手帳やスマートフォンに書き留めるだけでも十分です。これまでの経過を、次に診てもらう医師へ伝えるための手がかりになります。
また、かんしん広場には、記録するための道具として「症状・こころノート」という機能があります。体調や症状、その日の気持ちを、ご自身の言葉で書き留めておけます。
書きためた内容は「診察ノート」として、体調の変化を示すグラフとともに1ページにまとまり、診察のときに医師や看護師へ画面を見せて伝えることもできます。どちらも、会員登録(無料)をした方が使える機能です。

2|記録を医師に見せる

診察の時間は限られています。その場で思い出しながら話そうとすると、伝えたかったことが抜けてしまうかもしれません。記録を見せれば、症状や受診の経過をまとめて伝えやすくなります。

聞きたいことを事前にメモしておくのも一つの方法です。「いまどこまでわかっていて、次に何を調べる予定か」を確認することで、今後の見通しが少し見えやすくなることもあります。
自分ひとりで説明するのが負担な場合は、信頼できる人に同行してもらう方法もあります。

3|別の医療機関で診てもらいたいときは「紹介状」を頼む

別の医療機関で診てもらいたいときは、現在受診している医師に紹介状を書いてもらう方法があります。紹介状の正式名称は「診療情報提供書」です。これまでの症状の経過や検査結果などを、次に診てもらう医師と共有しやすくなります。

紹介状の作成には健康保険が使えます。準備に時間がかかる場合もあるため、受診先を変えたいと考えた段階で相談しておくとよいでしょう。

なお、紹介状をもらって別の医療機関を受診することと、セカンドオピニオンは同じではありません。セカンドオピニオンは、すでに示された診断や治療方針について、別の医師から意見を聞くための仕組みです。

診察や検査は行いません。まだ病名がついておらず、診察や検査を受けたい場合は、別の医療機関を受診する方法について主治医と相談します。

4|相談できる窓口がある

難病に関する相談窓口として、都道府県と指定都市には「難病相談支援センター」が設置されています。相談は無料で、治療を続けながら生活するうえでの悩みや、制度を利用するための手続き、患者会に関する情報などについて相談できます。

センターによっては、難病が疑われているものの、まだ診断がついていない方からの相談に対応しています。ただし、相談できる内容や支援の範囲はセンターごとに異なります。くわしくは、お住まいの都道府県などの難病相談支援センターへお問い合わせください。

5|診断がつかない状態が続くときの仕組み

さまざまな検査や診察を受けても、病名がつかない状態が続くこともあります。診断がつかない患者さんのうち、一定の基準を満たす方を対象とした研究の仕組みとして、IRUD(アイラッド)があります。
IRUDへの参加は、かかりつけの医療機関などを通じて紹介される形で進み、患者さん本人が直接申し込む仕組みではありません。対象となる可能性があるかどうかは、主治医に相談して確認します。


おわりに

診断までに時間がかかるのは、患者さんの努力が足りないせいではありません。病気の特徴や検査の限界、診療経験のある医師が限られていることなど、さまざまな理由が重なることがあります。

症状や受診の経過を記録すること、その記録をいまの医師に見せること、相談できる窓口を知っておくこと。これらは、病名がつく前から始められ、受診する医療機関が変わっても役立つ情報になります。

診断がつかない状態を、ひとりで抱えたまま探し続ける必要はありません。医療機関への紹介や相談窓口など、次につながるための仕組みがあります。


関連情報

● 診断がついた場合には、医療費の助成が受けられることがあります。制度の内容は、かんしん広場の「難病の医療費助成制度」のページをご覧ください。
● お子さんの症状が続いている場合は、「子どもの病気事典」もあわせてご覧ください。
● 外見からは分かりにくい困難については、本シリーズの記事3で扱っています。