【血友病・小児医療】石黒精先生 インタビュー

【第一部】


血友病診療と研究をつなぐ

小児血液・血栓止血の専門医 石黒精先生が歩んだ道

写真:石黒精先生

血友病の診療には、日々の出血予防や治療だけでなく、手術時の止血管理、多職種による支援、治験や研究など、さまざまな取り組みが関わっています。

国立成育医療研究センターで血栓止血領域の診療体制を立ち上げ、血友病を含む小児血液疾患の診療と研究に長く携わってきた石黒精先生。

第一回では、医師としての歩みと、臨床と研究を行き来しながら血友病診療の基盤を築いてきた経緯について伺います。

 


お写真は、小倉さんの許可を頂いて掲載しております。

Q.医師を志し、小児科、さらに小児血液を専門にされたきっかけを教えてください。

もともとは、生物系や農学系の研究者になることを考えていました。医師を目指すうえで明確なきっかけがあったわけではありませんが、父が薬剤師だったので、その影響もあったのかもしれません。

小児科を選んだ理由は比較的はっきりしています。これから先の長い人生がある子どもたちを診ることに意味を感じたからです。それに、私が卒業した信州大学では小児科の医局の雰囲気が良かったことも大きかったですね。当時の信州大学小児科は血液領域に力を入れていたので、その環境の中で自然と小児血液を専門にするようになりました。造血幹細胞などの研究にも携わり、診療と研究の両方に関わってきました。

Q.血友病を含む血栓止血領域に携わるようになったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。

大きな転機は、国立成育医療研究センターに移ったことです。それまで私は血液疾患の診療や研究を続けていましたが、成育医療研究センターにはすでに血液がんの専門体制がありました。そこで、既存の分野と重ならない新しい領域を担当することになり、当時まだ十分な体制がなかった血栓止血分野を任されました。

血友病をはじめ、血が固まりにくい病気や、反対に血栓ができやすい病気を診る領域です。最初から血友病を専門にしようと決めていたというより、必要とされた領域を引き受け、そこから専門性を築いていったというのが実際のところです。

Q.先生にとって、臨床と研究はどのようにつながっていますか。

血液の分野では、昔から臨床と研究は表裏一体だと思っています。患者さんを診る臨床の現場と、病気の仕組みを調べる研究の場を行き来することが、ごく自然な領域なんです。白血病や造血幹細胞の研究もそうですし、血栓止血の分野も同じです。

私は、人がすでにやっていることを後から追うよりも、まだ十分に手がつけられていないところを見つけて、新しいことに取り組む方が好きです。臨床だけ、研究だけと分けて考えるのではなく、両方を行き来することで、診療の中にある課題を一歩先へ進められるのだと思います。

Q.診療の中で見つかる疑問や、まだ解決されていない課題を、どのように研究へつなげてこられたのでしょうか。

日常診療をしていると、「なぜこの患者さんはうまく診断できないのか」「今の治療では十分ではないのではないか」といった、まだ答えのない部分が見えてきます。私は、そうした“隙間”を見つけると、研究で確かめたくなります。

たとえば血小板の分野では、免疫性血小板減少症(ITP)の診療やガイドライン作成、先天性血小板減少症の遺伝子解析などに取り組んできました。診断がつかないまま長く治療を受けている患者さんがいることや、病気を正しく見分けることで不要な治療を減らせる可能性があることは、臨床と研究がつながる分かりやすい例です。一つひとつの課題を地道に解決していくことが、診療の進歩につながると考えています。

研究を続けるうえでは、結果を論文にまとめるだけでなく、診断や治療として患者さんに還元していくことが大切です。血液の領域では、新しい知見が診療に結びつき、診療で生まれた疑問が次の研究テーマにつながっていく。私は、そうした循環の中にいること自体に研究の面白さを感じています。

Q.国立成育医療研究センターでは、血友病診療の体制をどのように築いていかれたのでしょうか。苦労されたことも含めて教えてください。

着任した当初、血栓止血分野の体制はほぼゼロからのスタートでした。そこで、成育医療研究センターの強みを生かしながら、一つずつ必要な機能を整えていきました。

血友病の患者さんが手術を受ける際の止血管理、凝固因子の状態を確認する迅速検査、中心静脈ラインを使った治療など、専門的な対応が必要になります。外科、歯科や整形外科など院内の診療科、看護師、検査技師などにも協力してもらい、患者さんを多職種で支える体制を作りました。24時間の凝固因子活性モニタリングなど、通常の病院運営では簡単ではないことも、関係者の協力を得ながら形にしていきました。

さらに研究班を立ち上げ、情報発信や講演活動を続ける中で患者さんが集まり、血友病製剤やITP治療薬の治験にも参加できるようになりました。診療体制が整うことで研究や治験が進み、その成果がまた診療に返ってくる。そうした循環を作れたことが、成育医療研究センターで取り組んできた大きな仕事の一つだと思っています。

まとめ

石黒先生のお話から、日々の臨床で生まれた疑問を研究テーマへとつなげ、その成果を再び診療に還元していくという、臨床と研究の循環を大切にされてきたことが伝わってきました。国立成育医療研究センターで血栓止血分野の診療体制をゼロから築いた経験にも、まだ十分に整っていない領域に取り組み、新たな仕組みを形にしていく石黒先生の研究者としての姿勢が表れているように感じます。

第二回では、石黒先生も携わってきた血友病治療の進歩と、それによって患者さんの生活がどのように変化してきたのかを伺います。


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