「できない」で終わらせず、「どうしたらできる?」を考える
自分の経験を社会の価値に変える、鈴東裕己さんの挑戦【後編】
前編では、脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された幼少期から、
地域の学校で過ごした学生時代、
そしてアメリカ・バークレーへの留学についてお聞きしました。
バークレーで出会った「困っている人に自然に声をかける」文化。
そして、学校法人での仕事を通して気づいた
「自分の経験が誰かの役に立つ」ということ。
その経験をきっかけに、鈴東さんは現在、
ユニバーサルサービスの授業や福祉教育、講演活動などに取り組んでいます。
後編では、活動を通して伝えていること、
鈴東さんが考える「障害者理解」、
そしてこれからの挑戦についてお話を伺いました。
1. 「特別な技術」よりも、まずコミュニケーションを
2.子どもたちと考える「違い」と「障害」
3. ドッジボールから考える「どうしたらできる?」
4. 「障害者理解」ではなく、「その人を知る」🔏
5. 「自分の好き・得意」を知ることが、活動につながった🔏
6. 「社会とつながる」ことで生まれるもの🔏
7. 地域にいる当事者が、自分の経験を伝えられる社会へ🔏
8. 「まずは自分を知る。そして、どうしたらできるかを考える」🔏
9. おわりに🔏

鈴東さんが取り組んでいる活動の一つが、ユニバーサルサービスに関する授業です。
車椅子を利用する人への接客などについて、実体験をもとに学生たちに伝えています。
鈴東さんがまず伝えているのは、「特別な技術が必要なわけではない」ということ。
「『障害のある人には特別な配慮をしないといけない』と思うと、
ちょっとハードルが高く感じるかもしれません。
でも、そんなに難しく考えなくてよくて、
まずは普通にコミュニケーションを取ってもらえることが一番ありがたいんです」
たとえば、レストランなどで車椅子ユーザー本人が注文しているにもかかわらず、
付き添っているヘルパーに向かって話しかけることがあります。
「僕が自分で注文しているのに、『コーヒーでよかったですか?』と
ヘルパーさんを見てしまうことがあります。
たぶん無意識なんですよね。
こっちのほうがスムーズなのかな、と思っているのかもしれません。
でも、まずは本人とコミュニケーションを取ってほしいんです」
分からないことがあれば、本人に聞いてみる。
どうしたらいいのか迷ったら、コミュニケーションを取ってみる。
そんなシンプルな一歩が、相手との距離を縮めるきっかけになります。
鈴東さんは、子どもたちを対象にした福祉教育にも力を入れています。
その特徴は、単に「障害について教える」のではなく、
自己理解と他者理解をテーマにしていることです。
授業では、なんと「じゃんけん」を使うことも。
車椅子を利用している鈴東さんがじゃんけんをすると、
最初は子どもたちには何を出しているのか分かりにくいことがあります。
しかし、何度も繰り返していくと、
少しずつ「鈴東さんが何を出しているのか」が分かるようになってきます。
その変化を通して、「違い」について考えてもらいます。

「最初は、違いがあることで『ちょっと怖いな』とか、
『どうしたらいいんだろう』と思うことがあるかもしれません。
でも、一緒に時間を過ごして、何度もじゃんけんをしていくと、
『この人はこうなんだ』って普通に分かるようになる。
そうやって一緒に過ごすことで、違いが『違いじゃなくなっていく』
という感覚を伝えています」

小学生との授業では、ドッジボールを題材にすることもあります。
鈴東さんは、子どもたちに問いかけます。
「僕はボールを投げるのが難しい。キャッチするのも難しい。
じゃあ、どうしたら一緒にドッジボールができる?」
すると、子どもたちからさまざまなアイデアが出てきます。
「転がしたらいいんじゃない?」
「こうしたらできるんじゃない?」
そんなふうに、子どもたちは「できない理由」ではなく、「できる方法」を考え始めます。
「『できないから終わり』ではなくて、『どうやったらできるんだろう』を
考えることが大事だと思っています。
工夫する方法って、実はいっぱいいるんですよね。
そういうマインドを子どもたちにも持ってもらえたらいいなと思っています」
それは、障害のある人と接するときだけに必要な考え方ではありません。
日常生活の中で「できない」と感じることに出会ったときにも、
新しい方法を考えるきっかけになるのかもしれません。..................................
※脊髄性筋萎縮症についての情報がご覧いただけます。
患者さんご家族の体験談や医師のインタビュー、患者会の紹介を掲載しています。